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へき地における緊急往診の必要性と可能性

 

  宮崎県・串間市市木診療所

  徳山 秀樹

 

要旨

救急医療の問題の一つに発生から初療までに要する時間についての課題がある。特にへき地の場合この問題は深刻であり,当地でも例外ではない。

救急車が覚知から現場到着までに要する時間は全国平均で約6分と言われるが,当地区は救急車到着に約30分を要する。当地区では救急患者発生の場合,救急車を呼ぶよりは,当診療所に来院するほうが早く初期治療を受けられる事になるが,しかし重症患者の場合は来院できない場合が多く,そのような場合は,緊急往診を行っている。また消防署とも連携し,当地区に救急車要請があった場合は,当診療所にも連絡が入り直ちに緊急往診を行うようにしている。現場で可能な検査,処置を行いながら状況判断を行い,入院が必要と考えられる場合は,そのまますみやかに最寄りの救急病院に搬送する。この緊急往診によってへき地でも初療までの時間が大幅に短縮されると考えている。

当診療所における緊急往診の実態について紹介し,へき地における緊急往診の必要性と可能性について考えてみた。

 

I はじめに

当診療所のある,串間市市木地区は人口約1,500人,65歳以上が約36%を占める市内でも最も高齢化率が高い地区であり,また独居老人も多い。交通は一部バス路線があるだけで,タクシーもなく,市街地へは拙劣な道路条件下に車で約30分を要するというへき地である。

当診療所は,串間市が無医地区解消の目的で,へき地補助事業の支援を受けて平成7年に設立した市直営の診療所であり,外来診療のみを行い入院設備は有しない。診療所の裏に医師住宅があり,そこに医師一人が家族とともに定住という形をとっている。

診療所に設置してある医療機器類を列挙する。

 

○医療機器

開院時の医療機器

カセットレスX線テレビ装置

X線直接撮影装置,自動現像機

自動血球計数器

超音波断層装置

心電計

 

平成8年度購入

簡易生化学検査測定装置(ドライケミストリー)

上下郡消化管内視鏡システム

心電図モニター患者監視装置

 

開院以来初期救急医療の充実を第一目標として,それらに関する医療機器の整備を強く要求し,平成7年度の黒字経営を理由に,平成8年度には上記医療機器をリースではあるが,設備することができた。現在は初期救急治療や検査を行うにあたっては,第一線の診療所としては,ある程度の機能を備えているものと考えている。

 

 

 

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