最終診断は紹介先病院で受けたものであり,また,治癒の判定は,手術後の年数が少なく5年生存を確認できないので,手術所見やその後の経過に基づいて私が判定したものである。胃がん発見は16名と圧倒的に多く,そのうち12名が治癒している。悪性新生物死第2位の肺がんの発見が意外に少ない。胃がんは肺がんに比べ罹患率は高いが近年早期発見.早期治療で全国的に死亡率が低下してきている1)2)ことや,日本は欧米より胃がんの罹患率が高い反面,患者の予後は比較的良いが,このことは各国の診断基準の違いによって説明できる3)との報告も考慮に入れる必要がある。大腸がん死の1名と食道がん死の1名は以前から当院に通院中の患者で,それぞれ注腸Xp.胃カメラを勧めていたが恐怖感や検査のつらさなどからかたくなに検査を拒んだ人であり,死亡したことはまことに残念に思われる。肺がんで死亡した1名は,都祁村肺がん検診で要再検であったが再検査を受けず,約10ケ月後,咳.痰.喘鳴などの症状で当診療所受診し発見した患者である。大腸がんで治癒した2名は共に当院に通院中のところ,1名は検便検査にて潜血反応(+)のため・他の1名は下痢が続き血便も出るとのことで注腸Xp検査を施行した。2名共紹介先病院で根治手術を受け約2年になるが健在である。なお,図12の中には当村での老人保健検診事業で要精検になった患者が4名重複して含まれている(1名は胃がん検診で要精検・1名は基本健康診査で腹部腫瘤を触知し勧めて胃カメラを施行した胃がん患者・1名は基本健康診査で体重減少があり勧めて胃カメラを施行した胃がん患者・他の1名は腹部エコーで要精検となった食道がん患者)。
図13に都祁村診療所で平成5年7月から4年間に胃カメラで発見した胃がん患者発見の経過と進行度の内訳を示す。当年の胃がん検診で要精密検査となり胃カメラで胃がんであった思考が1名,以前から胃カメラ登録中の患者から4名(そのうち1名は胃腺腫でフォローアップ中がん細胞出現),消化器症状があるため胃カメラ施行した患者から8名(前記の基本健康診査で体重減少を認めた1名を含む),消化器症状はないが前年度ないし当年度の胃がん検診を受けていないので勧めて施行した患者から3名(前記の基本健康診査で腹部腫瘤を触知した1名を含む)を発見した。
図14に都祁村診療所で平成5年7月から4年間に胃カメラで発見した胃がん患者の年齢と進行度の内訳を示す。手術を希望しない2名はともに80歳代である。そのうち,1名は肉眼的所見から早期胃がんと判断され,発見から2年経過した現在も元気に生活している。他の1名は肉眼的所見から進行胃がんと判断され,約1年後に死亡した。