都祁村保健センター・診療所で過去4年間に発見した悪性新生物
―胃がんを中心として―
奈良県・都祁村診療所・保健センター所長
森藤 哲章
要旨
我国における平成8年のがんによる死者は,厚生省の人口動態統計(概数)によると,27万1,000人超で死亡者総数の30.2%を占め,3人に1人はがん死の時代になった。しかも,30才から64才までの壮年層の全死亡の43.2%と心臓病・脳血管障害による死亡に比べ比較的若年者の死亡が多い疾患である。長寿社会で医療費の削減が叫ばれている昨今,さらに健康で長生きをし,医療費を削減していくために,都祁村でも早期発見・早期治療・生活習慣改善を目的に各種健康診査を実施している。都祁村健センター・診療所において平成5年7月1日から4年間に発見した悪性新生物について,胃がんを中心に報告する。
I バックグラウンドとしての都祁村の紹介
都祁村は,奈良県北部を東西に走る名阪国道の針インターをほぼ中央として大和高原に南北に細長く存在し,鉄道はないが奈良盆地にも比較的出やすいこともあり,山間部としてはめずらしく人口増加の村である。人口は平成9年3月31日現在6,937人である。人口構成は図1のようになっており,高齢化率も山間部にしては比較的低く18.2%である。健康に対する住民の意識は高く,各種検診受診数は年々上昇している。平成7年度受診率は,基本健康診査67.9%で奈良県2位,肺がん検診72.1%.大腸がん検診66.2%で共に奈良県1位,胃がん検診は30.2%で奈良県5位(前年度までに要精検になった人の多くは,都祁村診療所で胃カメラ登録患者となるので胃がん検診から除外される)であった。残念なことに,乳がん・子宮がん検診受診率は高齢者の受診状況が悪くて25.2%.22.8%と高くない。