躯幹のみに発疹があった例2人,掻痒のみ2人,その他は喘息の悪化,慢性関節リュウマチの悪化例で,HPVとは確診しにくかったが,同時期に発症しているためHPV感染であろうと推定した。
小児は7人で2オから12才まで男4人,女3人である。全員,両頬の蝶形紅斑が特徴的であり確診した。
小児では,その他の所見として頸部リンパ節腫脹を認めたことで,両側頸部,特に側頸部より項部に近い部位に小豆大のリンパ節を数個ずつ認めた。
1例は6日目に消失したのを確認できた。
リンパ節腫大は7人中3人にあり,2人になし,他医にかかった2人では不明だった。3人中の1人には両腋窩部のリンパ節も触れた。
その後,5月に小学校の検診を行ったが,約80人の在校生中7人に頸部リンパ節を触知した。
7月検診では1人であった。
保育所ではEIの診断がついた者は,5才児で14人中8人,4才児で6人中1人,3才児で17人中5人,合計37人中19人で約50%以上が,'96年2月中旬より3月19日にかけてEI感染が明らかだった。
小学校ではEIの診断がついた者は,2月18日より3月19日にかけて全児童数78人中8人だった。
考察
小児りんご病の周辺に多彩な症状を示すHPV感染症を経験した。
(1) 全身倦怠感,違和感,肩こり等が強い(両肩に石が乗っているよう)。
(2) 顔面,四肢の腫脹が著明であったが,浮腫と異なるところは,よくみれば皮診があり,全体像としては赤っぽい腫脹で,圧痕が浮腫ほどにはつかない(炎症性浮腫と思われる)。
四肢の症状が顔面に先行することがあり診断がつきにくい。
(3) 頸部リンパ節の腫大,数個あり。頸部の後方に多く,僧帽筋辺縁に沿ったリンパ節腫大もあった。
(4) 蕁麻疹,風疹と誤診される。
(5) 全経過が長い。二峰性である。小児も成人も同様である。
(6) 好酸球増多,γ2グロブリン増加,腎障害等に影響したかと思われる症例があった。
(7) 予後はよい。
この次の機会に1人のりんご病患者を発見した際には,その患者の身近に?@〜?Dの症状の患者がいればHPV感染を常に念頭におこうと思う。適切な助言を与えられれば遠隔の病院を受診して疲労したり,経済的,時間的な冗費は避けられるだろう。
(8) HPV抗体測定が安価にできればよい(保険適用外)。
* 終わりにあたり,診療所の勤務者,小学校の保健の先生,保育所の保母さんに感謝します。
参考文献
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長浜康弘,他:臨床神経学,32:1035, 1992
篠田英和:武杵臨医誌(3);45, 1993
篠田英和,他:臨皮,48:31, 1994
岡田和悟,他:内科73(5);979, 1994
T.NAKAZAWA,他:InterMed,34(3):163, 1995
湊原一哉:臨皮,50(1);37, 1996
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