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4. 胃潰瘍または十二指腸潰瘍:除菌症例の胃:十二指腸潰瘍比は3.44:1であり,非除菌例では3.00:1と有意差はなかった。

5. 初発潰瘍または再発潰瘍:除菌症例の初発:再発潰瘍比は1.67:1であり,非除菌例では1:1と有意差はなかった。

6. 潰瘍の形:除菌例のスコアは1.28±0.86であり,非除菌例の1.45±0.88と有意差はなかった。

7. 潰瘍の大きさ:除菌症例のスコアは1.43土0.95であり,非除菌例では1.65±1.04と有意差はなかった。

 

F. 各背景因子別のH.pylori除菌率(表3)

1. 年齢:65歳未満の若年者の除菌率は73.3%であり,高齢者の除菌率90.0%に比べ有意に低かった。

2. 性:男性の除菌率は83.6%であり,女性の除菌率74.3%と有意差はなかった。

3. 単発潰瘍または多発潰瘍:単発性の潰瘍の除菌率は81.1%であり, 多発性の潰瘍の除菌率69.2%と有意差はなかった。

4. 胃潰瘍または十二指腸潰瘍:胃潰瘍の除菌率は79.5%であり,十二指腸潰瘍の除菌率81.8%と有意差はなかった。

5. 初発潰瘍または再発潰瘍:初発潰瘍の除菌率は82.1%であり,再発潰瘍の除菌率77.3%と有意差はなかった。

6. 潰瘍の形:円形潰瘍の除菌率は79.5%,楕円形潰瘍の除菌率は81.5%,線状または不整形潰瘍の除菌率は71.4%であり有意差はなかった。

7. 潰瘍の大きさ:10mm以下の潰瘍の除菌率は79.5%,10mmから19mmの潰瘍の除菌率は64.5%,20mm以上の漬場の除菌率は73.3%と有意差はなかった。

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V 考察

H.pyloriの除菌療法としてProton pomp in‐hibiter(PPI)十抗菌剤による治療が我が国では従来,広く用いられている。しかしDual therapyでは治療効果は十分ではなく12),治療の主流はTriple therapyに移行しつつある。H.pylori除菌については治療方法についての報告は数多くあるが,生体側の要因についての報告は少ない。

今回,我々は年齢,性,潰瘍の数,潰瘍の種類,潰瘍歴,潰瘍の形,潰瘍の大きさ等の生体側の要因についてRetrospectiveに検討を行った。これらの要因の中で年齢の因子でのみ有意な差異を認めた。すなわち若年者に比べて高齢者においてH.pylori除菌率が高いという結果が得られた。これはH.pylori感染より長期間経過していると思われる高齢者では萎縮性胃炎13)-14)が拡大し,H.pyloriが存在できない腸上皮化生へ進展しているものがあり,胃内のH.pyloriの細菌数が少ないため除菌されやすいものと推測された。また若年者に比べ高齢者では胃粘膜萎縮が進行し胃酸が低下しており,除菌療法に用いるAMPCやCAMが不活化されにくいと推測された。我が国では近年,高齢化社会を迎え,様々な問題が起こってきている。医療面では高齢者は多数の疾患を一人の患者が持っている場合が多く,変形性関節症や変形性脊椎症といった整形外科的疾患の合併も多くみられる。このような疾患の治療においてNSAIDs(Non-sterOidal anti-inflammatory drugs)が広く用いられる。

 

 

 

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