1. 「チヤマイ」は舳倉島の海女に見られる,パニック様発作を主症状とし,予期不安のために海女作業や日常生活に支障を来たす疾患と判断された。
2. 「チヤマイ」の有病率は約15%で,30歳台に多く発症し,予後良好な「チヤマイ」は全体の約44%であった。臨床症状の中では,動悸が最も高い出現頻度を示した。
3. 「チヤマイ」は診断学的にはパニック障害と関連が深く,舳倉島の海女に特有な不安障害の一病型とみなされた。
4. 「チヤマイ」により少なからぬ海女において,海女作業や日常生活に困難が生じていることに鑑み,今後様々なアプローチから「チヤマイ」の本態を明らかにすることが必要であることを指摘した。
VII 謝 辞
本稿を終えるに当たり,御指導と御校閲を賜りました石川県立高松病院院長の中村一郎先生,副院長の倉田孝一先生,また舳倉島総合検診に参加する機会を与えていただきました石川県厚生部,市立輪島病院舳倉診療所所長(当時)の又野豊先生,およびアンケートの収集にご協力いただいた自治医科大学石川県人会の皆様に厚く御礼申し上げます。
なお,本論文の要旨は第137回北陸精神神経学会(1997年6月29日,金沢)にて発表しました。
文献
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