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吉田 万三(足立区長)

 

ご紹介にあずかりました足立区長の吉田でございます。本日は社団法人日本の水をきれいにする会と足立区が共同で開催いたしました、「綾瀬川を考える交流会」に多数の皆様のご参加をいただき、誠にありがとうございます。綾瀬川は昭和30年頃までは、川の水で米を砥いだり洗濯をし、魚釣りや水泳ができる、豊かな自然を保っていたと聞いております。平成6年度に環境庁の委託により、日本の水をきれいにする会が実施されました。綾瀬川流域における意識調査によりますと、7割を超える人々が綾瀬川に対し、「汚いが愛着のある川」と感じられております。

わたくしごとで恐縮でございますが、実はわたくしの父親、もうすでにこの世にはおりませんけれども、戦争中から戦後にかけまして、綾瀬新橋のたもとの今はちょうど空き地になっていますが、鉄道機器という会社で仕事をしておりました。ちょうど、レールだとかジョイントみたいなものを作る会社でありました。わたくしは、子供の頃からよく会社の話を聞かされておりまして、「そこの綾瀬川から鉄道関係のいろいろなものを船で積み出していく」という話だとか、「洪水になったら、あの辺りは近所に金魚屋さんがたくさんあって、全部金魚が洪水であふれ出し逃げ出してしまた」などという話を、幼心にたくさん聞かされまして、わたくし自身も、綾瀬川というとひとごとではないような思い入れを抱いております。しかし皆様ご案内のとおり、綾瀬川は昭和55年から平成6年まで、15年間建設省直轄一級河川のうちで、水質ワースト1という不名誉な記録を続けておりました。平成7年は、流域の皆様、関係機関の皆様のおかげをもちまして、なんとかワースト1から脱却をすることができたということでございます。

綾瀬川の水質は昭和40年代後半に比べると着実に改善され、ここ数年も緩やかながら改善の傾向を続けております。しかしながら、環境基準には今一歩というところであり、依然として全国有数の汚濁河川であることに変わりはございません。足立区におきましては、これまで下水道の整備に力を入れ、すでに既成100%の普及を達成いたしました。また生活排水対策モデル事業をはじめ生活排水対策の普及啓発にも力を入れてまいりました。今後も河川浄化に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

さて、綾瀬川を考えるうえで、つぎの3つの視点を大切にすることが大事だと考えております。

第一には、国、都、県、流域の市、区など上流から下流まで、流域が一体となって綾瀬川の問題に取り組む点であります。すでに「綾瀬川清流ルネッサンス21地域協議会」や「綾瀬川浄化対策協議会」などの広域的な取り組みがなされております。住民の皆様のあいだにおきましても、幅広い交流がなされることを願っております。

第二に、行政だけでなく住民の皆様とともに考え、取り組むことであります。これには、行政はできる限り情報をお伝えし、できる限り多くのご意見をお聞きする機会を設けてまいりたいと考えております。

第三に、綾瀬川の持つ様々な機能に目を向けていく点であります。綾瀬川に対する期待は極めて多様なものがあります。安全で自然豊かな、また楽しめる綾瀬川を目指して、綾瀬川の将来像についても皆様とともに考えていきたいと考えております。

本日の交流会には、上流の市や下流の区の皆様をはじめ事業者の皆様、また建設省、環境庁、東京都など幅広くお集まりいただいております。ぜひ活発なご発言をいただき、綾瀬川の浄化に流域が一体となって取り組めるよう、有意義な交流を深めていただくことをお願い申し上げまして、わたくしのご挨拶とさせていただきます。

 

 

 

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