[参考資料]
市民の立場からみた行政苦情救済活動についての期待
大塚正宸(河北新報社論説委員長)
?@ 「お役所仕事」と行政苦情
・ 行政苦情の救済や解決は重要だが、個々の事案が解決されても全国で年間4万件、東北で 6000件を超す苦情が殺到するような「お役所仕事」そのものを改めない限り、真の問題解決にならない。
・ 苦情の中には住民側の無知、誤解、身勝手に基づくものもあるだろうが、それにも役所側の説明不足が関係していないか。アカウンタビリティーは行政の基本。
・ 明らかに苦情申し立ての理由があると認められるケースのほとんどは役人がサービス利用者の立場で考えず、役所側の都合を優先してきた結果だと思われる。
・ 東北大付属病院が駐車場スペースの6割を職員用に割り当て、外来患者らの駐車難をきたしていた/宮城県立精神薄弱児施設で夕食開始時間を午後4時半ごろとしていた/宮城県内の身障者が稀装具の給付を受けるためには仙台市にある県の判定機関まで出向かねばならなかった。
・ 硬直化した法令主義と前例踏襲主義も目に余る。身障者補装具は書類判定の範囲を拡大して利用者の便宜を図っている県も多いのに、宮城県は直接判定にこだわり続けていた。担当者自らの判断で事務を改善していく意欲がなさすざる。
・ 行革大合唱の中で国も地方も行政のスリム化が重要課題となっているが、スリム化とは行政サービスを低下させることではないという点を特に心に留めてほしい。
?A オンブズマンのネットワーク化
・ 東北大は我慢強く、「おカミ意識」もなお濃厚に残っている。8年度で6400件という 行政苦情の陰には、不満があっても我慢して表面に出てこないものが相当あると想像される。行政相談委員をもっと住民に身近なものにしていくことは、潜在的な苦情発掘のためにも重要。
・ 市町村は行政相談委員の存在意義をどう認識しているか。PRには市町村の全面的協力が欠かせない。広報誌などで「相談はこの方に」と呼びかけるだけでなく、身近な問題の解決事例を具体的に示したい。
・ 行政相談委員だけではなく県政オンブズマン、民生児童委員、人権擁護委員、県や市町村の相談窓口担当者などが連絡協議会をつくり、日常の相談業務でも連携を強める必要がある。
・相談や苦情の内容には、全国共通の問題が多いはずであり、オンブズマンも行政担当者も解決事例を共有の財産として事務改善に役立てることが課題だろう。
・ インターネットの活用―総務庁は全国版、県や市町村は地域版のホームページを立ち上げ、相談の呼びかけや相談先の案内とともに、住民が相談したい事項を自由に書き込めるような工夫を。