くろうとして許可を求めるのに非常に不利益を受けているからオンブズマンとして救済して欲しい」ということを申し立ててきました。
私は、業種によってはそういう身元証明書を必要とする場合もあるかと思いました。しかしそれならば、県としては、「宮城県ではそういう証明書が必要である」ということを県民に対して文書で出すというようなことは、当然やって然るべきだろうと思って、そのことを県に申し入れたわけです。そうしたら、県はすぐに、「それでは文書を出します」ということでこの事件は解決していますが、県民の方は、「今まで県に対していろいろなことを言ったが少しも聞いてくれなかった、それがオンブズマンから一言あっただけでこんなに変わるものか」といって驚いていました。これは県が受け入れましたが、もし県がそういう申し入れに応じないときには、オンブズマンとしては、県に対して、今の例で言えば「こういう文書を出すべきである」という「勧告」をする権限を持っています。オンブズマンから勧告が出たときには、県はそれを最大限尊重しなければならないということになっています。それから、Aさんとの関係で問題があったときに、これはAさんだけの問題ではない、BさんやCさんというような他の県民の人との関係でも問題が起こるというな、うに考えたときには、制度の改善を図るために、オンブズマンとして「意見の表明」をすることができるようになっています。そして、オンブズマンが意見の表明をしたときは、県としてはこれも最大限尊重しなければならないということになります。
3 オンブズマンの処理実績
昨年11月にオンブズマン制度ができてから今年の9月末までに、県民からの苦情を受け付けた件数は100件で、処理をした件数は81件です。したがって処理率は81%ということになります。しかし、それについて調査をしている間に、例えば、これは県道の問題ではなく市道の問題であるといったような管轄外になるものが出てきたりして実質調査に入ったのは53件です。その53件の中で、申立人からの中立が全部又は一部認められた、すなわち申立人の意向に全部又は一部沿った形で解決されたのが24件ですから、それは45%の率になります。そして、そのような場合には、オンブズマンから県に対して「県の行為が適正でなかった」ということで申し入れをしているわけですが、県はそれを全部認めています。全部がオンブズマンの申し入れたとおりになっているので、「こうすべきだ」という勧告をした例はまだ1件もないという状況です。
4 県職員の意識改革
こうして、宮城県のオンブズマンは県民の権利救済機能を持っていますが、それと同時に反面において、県職員の意識改革機能を実際に果たしていると思います。というのは、中立があると申立人からよく意向を聞くと同時に、担当の県の職員や担当の課の課長補佐・課長などを呼んで事情を聞くわけです。県の職員から話を聞いていると、どうも「役人意識が非常に強い」というな、うに感ずる場合があります。そういう場合には、すぐに、県職員のあり方について率直に話をするようにしています。それは、「国の政治が民主主義であると同様に、県の政治というのは、いうならば「県民の、県民による、県民のための政治」をすることが眼目である。したがって、県の職員は「県民のための政治」をするために県に雇われているのである。だから、県民の立場に立って常に考えるということをしてくれなければ困る。それには、県民にやさしい態度で接する、そして分かりやすい言葉と文書で県民に納得するように説明しなければならない。そういう真心のこもった政治をする、これが県の職員の使命である」ということを率直に話をして分かってもらうようにしているわけです。
県が行政改革を進めるについて県民にアンケート調査をしましたが、そこで出てきた回答の中にも、「県職員の意識改革が必要だ」というのが90.6%を占めています。今考えてみると、「国の政治でも地方の政治でも一番大切なのは、公務員が「公僕である」という意識をきちんと持つということ、県民あるいは国民のための政治をするということ、これをきちんと理解するということが大事だろう、そして、それが理解されれば県民との間のトラブルなども減ってくることになるわけであって、オンブズマンとしてもここをきちんと処理していこう」と考えて今のようなことをしています。すなわち、オンブズマンは県民からの苦情を行政につないでいくことが必要だろうと思います。そういう意味で、この県政オンブズマンの制度は、まだまだ十分に理解が徹底していない面があるので、この徹底に努め、広く皆さんに理解していただいて、いろいろな事案を持ってきていただいて、それを通じて県政の刷新にお役に立てればと思っている次第です。