場所等についての情報交換が十分でなく、相談事案の他の窓口への移送円滑化のための施策などを望む声が聞かれる。また既存の相談窓口についてもいまだに相互の連携、ネットワーク化が弱く、各種相談委員も行政の縦割りの中で枠を越えての結び付きに熱が入り難い。また相互間を結び付ける組織的活動も従来余り十分には行われて来なかった。すなわち個々の相談制度がわが道を行くで相互の関連が見えない、その結果折角の相談窓口の多様化も市民サイドからはそれぞれの位置付けが呑み込めず、アクセスし難いものとなっている。さらに最近の相談事案には、当該相談窓口の守備範囲を越えるもの、複雑多岐にわたるもの等、単一相談窓口では処理し切れないものが益々増える傾向にあり、横の連携の必要性が一段と強まっている。まさに相談活動の一層の総合化が求められている。
この点に関して、各種民間団体等の意向をアンケート方式でまとめた全相協の報告書によると、近年増えている公益法人等民間団体の相談担当者も、「権限的に処理出来ないもの、また、単一の相談窓口では適切な処理が出来ないもの等については公的機関や専担する相談所に移送するため、公的相談所・民間相談所を包含したネットワークシステムの早急な構築を」と訴えている。そして総務庁の行政相談制度への期待として「他の相談関係機関との連携がスムーズにとられるよう調整役になってほしい」とも述べている。
(2) 東北での連携推進策
多面化した折角の各種相談制度が国民の期待に応え有効に機能するためにも、また私共の行政相談制度が広く一般に理解され、調整役を含めて、その役割を十分に果していくためにもこの相談窓口のネットワーク化、総合化は必要不可欠と思う。
こうした思いから私どもは、日頃の相談活動の場を同時にネットワーク化推進の機会と捉え、まず市民が最もアクセスし易い市、町、村、ついで県の相談窓口との緊密な連携、さらにその輪を人権擁護委員、民生委員、生活相談員等の各種委員に拡大すべく努めている。
具体的には、総務庁の主催で、各行政機関、自治体総参加で各局・所毎に開設される「一日合同行政相談所」、ほぼ同じ仕組みで主要都市に常設されている「総合行政相談所」の活動が連携強化の柱となる。次に地域主導のものとしては、?@各自治体と行政相談委員が年間計画について話し合う「合同ブロック会議」、?A県、市町村、総務庁の3者が共催する「巡回合同行政相談所」の開設、?B同じく3者共催で参加対象者を拡げて開催される「巡回行政懇談会」等が相互理解の絶好の場。今後はこうした連携機会、話合いの機会を出来るだけ多く持つよう心掛けていく。いまひとつ各種委員との連携については、現在地方都市、農村部等において各自治体の配慮により行政相談の定例日と各種委員の相談日を出来るだけ近づけ同時開催の機会を多くして市民の便宜を図るケースが増えている。今後については自治体の支援の下、各委員と行政相談委員の話し合いでこれを組織化し、各地域の実情を踏まえながら定例相談を「合同相談」の形に発展出来ればと願っている。なおこの姿を今後大都市圏にも普及拡大し案件処理のスピード化、たらい回し等による不都合な処理の排除に努めたいと考えている。なお宮城県においても同様の考えにたち、総務庁等の協力を得ながら県内のすべての相談窓口を紹介する「相談窓口ごあんない」なる手引書を作成し関係者に配付している。
最後に各種相談委員の組織化に成功してこの10数年来着実な運動を展開し一般からも注目されている宮城県白石市(人口4万人)の例を紹介したい。同市では秋の行政相談週間を柱に毎年巡回移動相談所を市内8地区の公民館内に開設。この「巡回相談所」は市内の行政相談委員2名、人権擁護委員6名、生活相談員3名、消費生活相談員1名、家庭児童相談委員1名、青少年委員1名、市の関係課長3名の有士17名で構成している「白石市各種相談委員連絡協議会」が主体となり、協議会名で市民からの身近な相談に応じている。なお、相談会終了後委員相互で最近の相談事案の傾向、増えている問題の特徴とその対応等について学習啓発し、相互理解と連携に努めていると云う。連携の強く求められる折りから、東北では身近なこうした貴重な実績を波紋の核としてこれを全域に広がる運動を展開したいと思う。