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イ.日本型オンブズマンと呼ばれる我国の行政相談制度は、総務庁、行政相談委員、民間有識者による行政苦情救済推進会議の3者が一体となり、全国にネットを張りめぐらし て活動を展開する他国に例を見ない有機的組織体、苦情救済のための誇るべき一大シス テムである。委員1人1人がそのシステムを第一線にあって支える重要な一員であるとの自覚と誇りを持とう。

口.厳しい現実を注視し、「守り」の行政相談から「攻め」の行政相談に意識の転換を図ろう。

 

(4) 相談実績

東北管区行政監察局(宮城県)の平成8年度の相談処理総件数は6,342件(局処理2,817件、委員処理3,525件)で行政相談委員1人平均37.5件となっている。相談で特に目立った事案は道路、国税、老人保健・福祉、登記、年金等。なお、民事等を除く対象内事案のうち行政上の対応を求める事案は約3分の1で、その94.1%が解決済となっている。

今までに解決した事案の中には国際問題の絡んだものもある。八戸市の漁船員が東樺太沖で遭難、その後遺体が択捉(えとろふ)島に漂着した。遺体引取りの交渉を懸命に行ったが行き詰まり、この相談を受けた地元の行政相談委員は、早速青森行政監察事務所と協議、東北管区行政監察局を通じて本庁に連絡。本庁は外務省を通じて交渉、その結果、北方領土墓参団の一員として引取りのための渡航が認められ無事解決した。全国に張りめぐらされた苦情救済のネット網の偉力を改めて知らされた思いである。

 

2. 行政相談活動の一層の充実のために

 

行政相談活動活性化のための当面の課題は、行政相談制度並びに委員制度についての市民への周知徹底と行政相談委員の資質の一層の向上この2点。特に一般への周知徹底は行政への不信が募り、苦情救済の必要がますます強まる中で重要課題と考える。

また、各種相談窓口の共通課題として相互の連携をどのように充実、強化していくかということが考えられる。以下、私の所感を述べてみたい。

(1) 問題点

今日行政の複雑化や国民生活、価値観の多様化から行政のみならず各種相談への期待、ニーズが高まり、専門化も加わって実に多面的な相談活動が展開されており、各相談窓口ともそれぞれのニーズに基づき使命感を持っての活動でまことに心強い。しかし近年開設された多くの相談窓口の場合、横の連携体制が不十なことから既存の他の相談窓口の業務内容、開設日時、

 

 

 

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