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いるわけです。先程のサラム判事さんの講演にあったようなパキスタンのオンブズマン制度、あるいはエルウッド卿さんの講演にあったニュージーランドのオンブズマン制度、こういう例なども開かれた行政に向けての国民の信頼を確立しようという試みだろうと理解することができます。わが国でも国会において、オンブズマン的な機能を持った行政監視のための制度を導入することが現在議論されていることは、新聞等でご承知のことと思います。また、わが国のいくつかの学会でも行政苦情救済制度について検討が加えられつつあります。

 

2 こうした開かれた行政のために、情報公開、行政手続などと並んで行政苦情救済のための制度の整備が現在不可欠の条件となっています。

情報公開については、現在わが国では、都道府県、市町村のうちでほぼ400の地方公共団体が情報公開制度を発足させています。国の法律もおそらく明年あたりは制定されるものと考えられます。また、行政手続ですが、これも平成5年(1998年)には長年の懸案であった行政手続法が制定されて、行政のルール化が一応促進されております。

これと並んで、行政苦情救済制度の一層の整備が今日急を要する課題となっているわけですが、現在、わが国においては、行政苦情救済制度としては多様なものが存在していると言えるでしょう。多様なチャンネルが準備されているわけです。

まず、第1のチャンネルは市町村ですが、市町村は、市民と直接対話する第一線の機関ですし、そこでの広聴活動の一環として市民相談活動に積極的に取り組んでいます。

第2のチャンネルは、このような既存の制度に補完をするという意味で、最近、オンブズマン制度が都道府県なり市町村でも導入されています。神奈川県川崎市では、平成2年11月より川崎市市民オンブズマン制度がスタートしています。本県富城県でも、いうまでもなく平成8年11月に、宮城県県政オンブズマン制度(先程の丹野副知事から公的オンブズマンというお話がありましたが、公的オンブズマンとしての県政オンブズマン制度)がスタートしていることは、ご承知のとおりです。

第3のチャンネルが国の制度ですが、公正、中立的な立場から総務庁が行政監察の機能を活かしながら行政相談を広く実施しているわけです。

そして、第4のチャンネルとして、上に述べた総務庁の行政相談制度に、全国で約5千の民間人の方々が行政相談委員として市町村に配置されているわけです。きわめて簡便に市民の苦情に応じる体制ができています。

第5のチャンネルは、以上のほかに、特定の行政分野について民生委員や人権擁護委員など全国で多くの各種相談員等の方々が相談に応じています。すべて民間人の方々です。こういう方々の他に、もちろん、地元の弁護士会や消費者団体などからも相談窓口の開設が行われていることはいうまでもありません。

しかしながら、こういう制度がすべて十分に適切かつ円滑に「市民にとって望ましい行政苦情救済」活動を展開しているか否かは検討を要することでしょう。チャンネルはたくさんありますが、十分に機能しているかどうかは、さらなる検討も必要でしょう。

 

3 さて今回は、先ず、以上のような各種の行政苦情救済活動の特徴とか課題について、それぞれパネラーの方々からご発言をいただき、それぞれの制度の一層の充実を図り、市民にとって望ましい行政苦情救済を実現するための制度の問題、運営の問題あるいは制度と制度の連携の問題等について、ここで議論を深めていただきたいと思います。

 

 

 

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