日本財団 図書館


IV [パネルディスカッション]第1ラウンド

 

は じ め に

 

本田 弘(日本大学教授)

027-1.gif

1 さて、本日の仙台フォーラムは、ここにも書いてありますように、「公正で信頼される行政をめざして」ということですが、その一つの、そして最も重要なことは、本日のテーマでもあるところの「市民にとって望ましい行政苦情救済」を円滑に実現することであろうと思われます。しかし、このことは大変困難なことを伴うものであろうと思います。

今回、ここでパネルディスカッションを行う背景なり、あるいはこうしたテーマが取り上げられてくる事情なりをいろいろ指摘できるかと思います。私はこれを3点ほどに集約できるかと考えています。第1は、国民の価値観の多様化です。第2は、行政に対する国民の厳しい批判です。第3は、行政の複雑化・専門分化ということだろうと思います。こうした3つの問題が生じているといえましょう。

まず、第1の国民の価値観の多様化ですが、わが国では、第2次大戦後、特に1970年代以降、急速に国民の間の価値観が多様化してきたことは、すでにいろいろな統計の教えるところです。伝統的な価値観ときわめて今日的あるいは現代的な価値観あるいは国民一人一人の中にあるところの物の価値、生活の価値あるいは人間そのものの価値について、いろいろな見方が現れているわけです。しかも、これが大変流動的に変化しています。

第2の行政に対する国民の厳しい批判ですが、現在、国の行政、地方の行政ともに国民の各界各層からいろいろな批判や改善意見が寄せられているわけです。特に、われわれ国民の日常生活に関わる行政の制度、行政の機能、行政の運営などの側面への批判が盛んになっています。

第3の行政の複雑化・専門分化ということですが、行政の規模が大きくなれば、当然それに伴って行政の組織、機構、手続あるいは決定といったものが複雑化し、専門分化せざるを得ないことも事実でしょう。しかしながら、それらが国民から見て理解できないほどの複雑さ、あるいは国民が対応しきれないほどに専門分化しているのも現在の状況だと思います。

以上のことは、多かれ少なかれ世界の共通した現象でしょう。そのために、開かれた行政ということを目的に、その目的の実現に向けていろいろな形態の方策が採用されて

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION