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3 オンブズマンの概念

オンブズマンの概念の起源は、コーラン(イスラム教の教典)に遡り、1809年にスエーデンにおいて再定義されたものです。その時点で「オンブズマン」という名称が付され、さらに、オンブズマンへの市民からのアクセスビリティーや独立性又はその機能の柔軟性というような現代的な特徴が加味されました。オンブズマンの機能は、統治されるものというべき市民に、広く統治者による政策や決定に対して再審査の申立てをするために必要な仕組みを提供し、説明をするというものです。このオンブズマンの機能は、不服を申し立てて審理がなされ、そして決定が下されるというような裁判所的なものではなく、国民の側から請求があったものに対して調査を行って、拘束力のない緩い勧告を行うという再調査のための機関です。したがって、この機関は、強制力をもった勧告を決定するということではなくて、説得力をもって皆さんに納得して勧告を受け入れてもらうといった機関です。

 

4 オンブズマンの職権

オンブズマンが対象とする行政機関の問題や不正行為とは何かという定義ですが、これはかなり広く解釈されていて、一般的には、大臣が決定する政策又は裁判所が扱っている問題以外のものすべてと考えていただいていいかと思います。

オンブズマンのパワーというかその職権は、対立して紛争中の両方の当事者に対して、どちらか一方が勝ったとか負けたとかということを知らせるものや争うものでは決してなく、両方に妥当な解決策を受け入れてもらうために説得をするといったその説得力にあります。私は、オンブズマンとして何千件といった件数の勧告を行ってきましたが、それが相手に受け入れられなかったという事例は5本の指に入るほどしかありませんでした。もちろん勧告というものは、相手方にとって不本意なものですから、喜んで受け入れられるということではありませんし、時としては、しぶしぶ受け入れてもらわなければなりませんが、ほとんどの場合、相手に受け入れてもらっています。

オンブズマンの職務、仕事の過程では、はっきりとした勝者とか敗者とかは生まれません。そのために、皆さんに気持ちよく説得をして両方が納得するという形をとれるものですから、お互いに歩み寄って、さらに前向きに事例に対して対処できるということになります。

 

5 オンブズマンの役割

ニュージーランドにおけるオンブズマンの役割は、政府のあらゆるレベルに派生しています。それは中央政府や地方政府、またそれを支えている官僚が行った行政上の決定や行為を再調査することにあります。しかし、オンブズマンの機関は、政府の行政組織の中に組み込まれた機関ではありません。ニュージーランドのオンブズマンが、内閣そのものにではなくて国民の代表者が集まる議会に責任を負うというようになっていることは、わがニュージーランドにおいて非常に適切な点であるかと思います。

私どもが有しているオンブズマンの概念は、ニュージーランド以外の国や地域にも当

 

 

 

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