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3 おわりに

このように、私の国でのオンブズマンの仕事量は非常に膨大であり、その負担もかなりのものです。皆さんもご存じのように私の国は今発展途上の国ですので、私どもの国民の多くは、自分たちの権利にどのようなものがあるのか、自分たちがその不服申し立てをするために又はその権利を行使するためにどこに行けばいいのか、何を聞けばいいのかといったことが分からない状況です。ですから、そういった人々の苦情申し立てがオンブズマンに提出されることになります。オンブズマンは、申し立てを受けとると、それを検討してその事実関係を調べ、法的にも裏付けがなされるかどうかといったところを詰めて勧告を行います。オンブズマンの仕事は、神話の中のヘラクレスの例にもありますように、疑いもなく非常に困難な任務です。それは神の恩恵と様々な職員の支援、政府機関の協力によって何千人、何十万人もの国民が費用の負担なく、しかも、そういった不服申し立ての解決に当たっては1週間から遅くとも1年内には救済されるといったようなことを目指して、われわれが動いているわけです。

私は本日、このフォーラムに参加して皆さんからも様々なことを学ばせていただこうと思って参りました。皆さんもご承知のように、日本のこのオンブズマンの制度、行政相談委員の制度は、非常に効果的なものであります。そして、皆さんは戦後みごとに復興を遂げられました。その発展には目を見張るものがあります。私は、アジアの一員として、皆さんのそういった発展を大変嬉しくまた誇りに思っております。私は、皆さんがこれからも非常に栄誉あるこのようなシステムを続けていかれることを期待しています。ご静聴ありがとうございました。

 

[参加者からの質問]

日本では国民のアクセスとして、全国に私ども行政相談委員が5千人、それと各都道府県ごとに総務庁の出先機関が1か所設置されており、国民にとって非常に便利なシステムになっていると思っています。日本と同じくらいの人口を有するパキスタンにおいては4つの地方事務所で十分というふうに考えておられますか。また、そのアクセスについての課題は何でしょうか。

[回答]

ご指摘のように、私の国には4つの州に4つのオンブズマン事務所があります。そしてその4つのオンブズマン事務所は、中央(Federal)のオンブズマン事務所と直結していて、私は中央(連邦)のオンブズマン事務所を統括する立場にもあります。私は、80人の裁判官、判事、法的な知識を持った事務官をフルに使って、4つの地方事務局から吸い上げられた苦情に関しての案件を審査し、勧告を行うということを連邦レベルで行っています。

その州の問題を統括して解決するという州のオフィス(Provincial 0ffice)もあります。そこでは2つの州において、2つの郡の問題、苦情救済の問題、勧告を行っています。しかし、残念ながら残る2つの郡については、郡や地方等の事務局あるいはその救済制度等がまだ確立されていません。これが現状です。

一言付け加えさせていただきますと、皆さんご存じのように、私の国は発展途上の国でして、様々な資源、お金も人も物資も十分ではありません。しかし、私のオフィスのお話をさせていただきますならば、朝の8時から午後の3時まで休息することなく働きまして、日が沈むと同時に真夜中まで働くというふうに、非常に時間的な束縛が長く、そして一生懸命働いています。ですから、皆さんがもし私の国に来られましたら、私の仕事ぶりをチェックしていただければと思います。

 

 

 

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