で外国のオンブズマンやさまざまな関連業務の担当者と行政相談委員、そして学識経験者が交流する機会を提供し、啓蒙活動に努めた。これらのフォーラムにおいて、まさに各種相談機関との相互連携の必要性が強く認識され、出席者の賛意を得たことは、今後の一層緊密な連携のための大きなきっかけとなると考えられる。
特に仙台フォーラムにおいて、司会の本田 弘日本大学教授が、締めくくりとして「便利で総合的な苦情処理の仕組みの実現」、「制度の一層の充実と制度間の連携の強化」、
「積極的な交流、情報交換の展開」という3点を指摘された。この3点は今後の重要な方向を提起されたものであるといえる。
イ. これからの問題点
これからの問題点として重要なことは、まず最初に、最近の行政を取り巻く環境の変化にどのように対応するかということである。周知のように、行政手続法が施行され、また年内には情報公開法も制定されるとすれば、大きくこれまでの環境とは変化することになる。また同時に地方分権・省庁再編といった行政改革の動きも重要であることはいまさらいうまでもないことであろう。また国会においても、衆議院において決算委員会が決算行政監視委員会に改組され、参議院においても同様に、行政監視委員会が設置された。
このような状況の変化に対応して、苦情処理業務についても、その重要性は、これまで以上に大きくなってきているといえよう。これは基本的には、国の問題であるが、しかし当然に地方公共団体に波及し、また運動する問題である。行政手続については、国が先行し、地方公共団体は徐々に行政手続条例を制定している段階であるが、情報公開については、地方公共団体が先行し、国が後を追う状況になっている。とはいえ、まだ情報公開条例を制定していない地方公共団体もまだまだ多いのも現実である。
更に今後問題となるであろう新たな環境の変化の一つは、地方公共団体における行政オンブズマン制度の導入等に関する動きである。特に近年では都道府県レベルでも設置されてきている。既存の行政苦情救済制度との関係をどうみるかなどの問題がある。またもう一つは、最近全国的にみられる市民オンブズマン運動についてである。この二点については、今後の検討課題であるといえよう。
ウ. 望ましい方向性は何か
最後に望ましい方向性は何かということであるが、今日ほど市民と行政の関係が緊張している時期はないといってよかろう。さまざまな事態の展開によっていわゆる行政不信が極限まで達していることをまず前提として、その対策を考えていく必要がある。
イギリスでの調査のなかで、レディング大学オンブズマン研究センターのグレゴリー教授やギディング博士に話を伺い、「オンブズマンにとって最も重要なことは市民からの信頼を確保することであり、そのためには中立性を確立し、公正・公平な判断を行い、また政府の肩も野党の肩も持たず、当事者に対して親身になって相談にのることである」との基本を再確認した。これは、オンブズマンだけでなく、すべての苦情処理機関に必要な大原則であるといっても過言ではない。またもう一つ痛感したことは、行政への苦情を解決するためのシステムは、むしろある程度重なりあって、行政全体を満遍なくカバーする必要があるということである。ほんの僅かな人手や経費を節約したために、取り返しのつかない失敗をすることだってある。そのような事態は避けられるものなら避けたほうがよいといえよう。更に地方行政オンブズマンが刊行した『良い行政実務のための指針』(資料編所収)の中で、「行政側のミスが確認されたときには、関係する人に対する救済を実施するだけでなく、将来に向けて同様な問題が二度と起こらないように方策を講ずること」が重要だと指摘されていることにも注意されたい。
今日の行政に求められていることは、当然ながら公正で的確な判断をすることである。それを保障するためには、やはり、監査・監察・相談のための行政組織が必要なのである。このような組織は必ずしも単一のものでなく、様々なレベルで多様に発達してきた。その歴史的経過を踏まえ、更に国民のためによりよい活動を展開していくためには、前述したように苦情処理機関同士の緊密な連携が重要であることを、再度強調しておきたい。
このような連携があってはじめて、阪神・淡路大震災のような緊急事態が発生したときには市民の援護のために活躍し、また市民と行政とのあいだの円滑性を維持するいわば潤滑油の働きをすることが可能なのである。このような方向性がやはり望ましいのではなかろうかと考えるものである。