おわりに
-苦情処理制度を巡る最近の動向と行政相談活動への提言-
(1) 苦情処理制度を巡る最近の動向
本調査研究は、平成7年度に行った『自治体の行政相談業務に関する実態調査』の続編である。平成8年度には『阪神・淡路大震災における行政相談活動等に関する調査研究』を行ったため、1年中断した形になっている。
当初このような中断を行ったことが調査研究の連続性にどのような影響を与えるのか一抹の危惧があったことは否定できない。しかし結果は予想に反するものであったといえよう。つまり平成8年度に阪神・淡路大震災に関する調査研究を行ったことは、実は平成7年度および9年度の本研究を補強する極めて実証的な事例を提供する結果になったということである。つまりこれから先提言することは、2年間の本研究を踏まえての提言であるが、同時に部分的には8年度の研究成果も踏まえたものとなり、結果として、ある程度の相乗効果が認められるものとなったのではないかと思われる。
ア. 第三者機関による苦情処理の意義
最近地方公共団体でもオンブズマン制度の導入を考えるところが増加してきた。また情報公開や個人情報保護に関する異議申立を審査する審査会も定着してきた。さらに横浜市の福祉調整委員会や世田谷区の保健福祉サービス苦情審査会など新たな制度も普及し始めている。これらのことから結論付けられることは、市民にとって第三者機関による問題解決の意義は極めて大きいということである。管轄する行政機関の窓口では、日常業務の遂行が主たる目的であるので、その順調な流れを阻害するような問題は歓迎されない。また、実際問題としても現場レベルでは解決できない問題の方が大半である。そこで現行法令上どのような運用をすべきなのか、弁護士や大学教授のような学識経験者あるいはさまざまな経験を経た市民の代表が、行政とは一歩違った立場から、公平・公正な判断を下すことが今求められているといえよう。
特に重要なことは行政に対する苦情について現場の責任者による判断は、内容的にいかに正当なものであろうとも、苦情提起者にとっては受け入れにくいものであるといえよう。それに対して第三者機関による解決の結果は、納得しやすいものだといえよう。たとえすぐに納得できない結果がでたとしても、世間はその問題に関してどのように判断するのか、その基本が理解される効果はあり、また行政側にとっては、苦情提起者との間に無用の感情的トラブルが発生しないだけでもかなりの効果があるといえよう。
さらにどうしてそのような答えが出るのかを考えることによって一定の学習効果も得られる。つまりどうすれば、行政にとって受入れやすく、同時に市民にとっても効果の上る