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と言われる。実習制度のある300を超える職業のそれぞれに対して、全国的に統一されたカリキュラムがある。学生は職人証明書を発行してもらうために、外部の組織(同業組合や商工会議所)が主催する試験に合格しなくてはならない。

実習生の雇用は通常、2年半から3年半の期間である。実習生は後に使うことになる実際の機械や設備で訓練される。実習訓練は実習生に対し、その仕事に必要な技能だけでなく、広い意味の技能、例えば職業の世界でうまくやるために普通必要とされるものを身につける。ドイツ政府は職業訓練学校を建設し、公共セクターの実習訓練を用意しているが、「二重教育制度」が成功するかどうかは結局、民間企業が十分な数の実習生を受け入れるかどうかにかかっている。

低レベルの教育や職業訓練しか受けていない若者の方が、失業率が高い傾向があるとはいえ、このような若者はドイツでは、相対的に少ない。1978年または1979年に高校を卒業した学生の場合、1990年にはその80%が職業訓練(実習訓練などの形で)を修了するか、または大学を卒業している。米国の若者の場合は、1972年から1974年に高校を卒業して、大学の学位もしくは職業訓練の証明書を取得しているのは、そのうち54%にとどまっている。

 

5. ドイツの社会的コンセンサス

いわゆるドイツの「二重教育制度」は、企業で行う実地訓練と職業訓練学校の教育とを融合させようというものである。一般的にドイツの職業訓練には2つの目的がある。一つは雇用の際に必要と思われる技能や知識を習得させること。二つ目は労働市場への参入を容易にすることである。ドイツでは、若者に対する優れた初期の職業訓練を施す上で社会的なコンセンサスを得るにいたった長い歴史的な伝統を持っている。このことを心に留めておかなければ、ドイツの実習制度は十分に理解できず、米国への導入の可能性も考えることはできないであろう。

 

 

 

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