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第5章 補論

 

「若者の失業問題と学校から職場への移行」要訳

―アメリカとドイツー

 

ドイツでは、職業訓練制度の良さに関する社会的コンセンサスがあるため、若者の失業率は低い(1996年12月時点でのEU統計局の調査によれば、EU全体の25歳未満の失業率は平均21.3%であるのに対し、ドイツのそれは9.7%にとどまる)。これは、学校から職場への移行が比較的スムースに行なわれているためとされる。ドイツのこのモデルがアメリカでも適用されるかどうかに注目した論稿が、アメリカ労働省の機関誌“Monthly Labor Review,"March,1997.)に掲載されているので、文献として以下で紹介する。

近年、日本でも話題になっている「インターンシップ」(internship)制の導入問題に関して参考になれば幸いである。

 

U.S. and German youths:unemployment and the transition from school to work

ロバート.J .ギッテル Robert J.Gitter オハイオ・ウエスリアン大学経済学部教授

and

マルクス・シュオアー  Markus Scheuer ライン川ウエストファーレン経済研究協会研究員

 

1. 課題の所在

若者の失業は今日のアメリカが直面する深刻な問題である。この問題は現時点で若者達に経済的な辛苦を味わせているだけでなく、将来の経済的な成功を妨げることにもなる。さらに失業問題はひいては国全体に悪影響を及ぼす。というのも、熟練した労働力は、アメリカが高生産性と高賃金の国として、国際市場で勝ち抜くために不可欠なものだが、若者が仕事を経験したり、実施訓練を受けることができれば、将来の労働市場の隘路の発生や若者を育てるのに必要な負担も減ることになるからである。

ところがアメリカの失業問題は、学校側の新規学卒に対する職業教育の不備のほか、若者自体が学校から職場へうまく移行できないでいることに起因しているともいえる。一方、ドイツの包括的な実習制度(apprenticeship system)は改良を重ねて完成し、学校から職場への移行のモデルとみなされることが多い。例えば、ジェームス.J.ヘックマン(J.J.Heckman)、レベッカ.L.ロゼリウス(R.L.Roselius)そしてジェフリー.A.スミス(J.A.Snith)は、次のように述べている。

 

 

 

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