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た「未知なる因子」を得ることができる。

第一因子から第四因子までの4つの因子が得られた。第一因子の因子負荷量の最も多かったのは、「自分にどんな仕事が向いているかわからない」の0.63735であり、以下「深刻に考えるより気楽に生きる」「将来の仕事はもっと先になって考えたい」であり、現在時点を楽しく生きようとする考え方といえよう。仮にこの因子を「現在享楽スケール」と呼ぶことができよう。

第二因子は、「会社に勤めるより、独立して仕事をしたい」「親に反対されても自分がやりたいことをする」「仕事以外に情熱を傾けるものをもっている」の因子負荷量が多かった。「好きなことをスケール」といえよう。既にみたとおり、「自己概念」の中核をなすスケールである。

第三因子は、「社会的に尊敬される仕事につきたい」「仕事に役立つ資格をとりたい」「若いうちは、いろいろな仕事を経験したい」の負荷量が多く、「スペシャルスケール」と呼んでよいだろう。社会的に尊敬される仕事は、大組織の役職をイメージさせもするが、若者のみる「社会的尊敬」「資格」「いろんな経験」は、特殊ないし特定の分野でのスペシャリストを意味しているように考えられる。ここでは「スペシャリストスケール」と呼ぶのが正しいと考えられる。

第四因子は、「家族は過大な期待をしている」「今の世の中は若者にとって息苦しい感じがする」「自分の将来は自分で決めるべきだ」のマイナスの因子負荷量が多かった。

この因子の意味するところは、自己決断の苦しみを表わしており、「苦悩スケール」ということができよう。

第一因子から第四因子までを並べてみると、現代の若者の思いの、それぞれの側面を見事に捉えていると考えられる。「現在を楽しみ」「好きなことをし」「スペシャリストになり」たい。しかし、「息苦しいプレッシャーがある」ということになろう。

現在の一人ひとりの若者は、これら四つの因子をそれぞれ抱いていることもあり、どれかの因子が強く、或いは弱く、ときには反対に意識されているであろう。これまで分析してきたように「自己」を中核とした意識は、或る若者にとって、強くスペシャリスト指向をもち、将来を見据えている者もあろう。けれども、そのようなことに一向におかまいなく、専ら現在を楽しく過すことを考えている者もあろう。

どのような考え方をもった若者が、若者のうち何割を占めるか、という分析は、クラスター分析といわれる手法で得ることができる。ここでは問8で行われた12項目の「自分自身について」の回答を変数として、因子分析を行い、これに基づいてクラスター分析を行ってみた。

まず12の項目での答えから因子分析を待った。この結果は図表4-7のとおりとなり、三つの因子とすることが適当と考えられた。

第一因子は、「流行に敏感なほう」の因子負荷量0.70152が最も多く、以下、「大勢で騒ぐのが好きだ」「新しいことに取組むのが好き」「自慢できる特技や趣味をもっている」の四項目のほか、「リーダーシップをとるのが好き」が加わっている。この意味する共通の意識は、「流行」「新しいこと」に代表される「最新流行スケール」とよぶべきものと考えられ、しかもリーダーシップももっている。いかにも、新しい若者像、新しいリーダー像といえそうである。

 

 

 

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