第4節 小括――若年者のキャリアと企業の対応
若年者は境界人であると言われる。子供から自立した存在に移る時期にいるのである。学校教育を終えて、職業人として自立するために訓練を積まなければならない。その訓練は企業内のOJTで行われることが多い。そこで、企業の中で若年者が将来に希望と意欲を持って訓練を経験しているのか、どうかが大変重要な問題である。
企業の若者に対する全体的な評価は、勤務態度からみれば「満足」とはいかないが、「まあ満足」というところである。約6割の企業が「まあ満足」と答えている。定着性についても「一部悪い」と答えた企業が46.3%を占め、「満足」が41.5%と概ね、満足と言える。
行動特性をみると、職業人としての能力にはあまり満足していない。能力も不足、発想も固い、情報にも鈍い、と辛い点がついた。他方、職業人としての自己確立や組織人としての柔軟性は、職業能力よりは少しましで、どちらかと言えばまあ真面目であり、いわれた仕事は一応きちんとこなしている。態度もどちらかと言えば素直であるし、時間もまあ、守る。
とはいえ、スコアはほとんどゼロに近く、企業人の評価としては、どちらとも言えない、と言う程度にとどまった。不真面目と言うほどでもないが、真面目と断言するわけにもいかない、と言う程度である。その中では、「言葉使いなど社会的マナーを心得ている」点で最も否定的評価が多かった。次いで「社内の行事に積極的に参加する」が否定的評価が多かった。要するに、訓練ができていないのである。
巷間言われているような「情報に鋭い」とか、「発想が柔軟だ」という命題も賛否相半ばした。
要するに、訓練途上の人間であるというのが、企業の大まかな受け止め方だと言える。では、それに対して企業は十分な教育訓練を施しているのだろうか。実務教育はかなり広範に行われているが、育成に不可欠な動機付け、すなわち(1)目標を提示し、(2)本人にそれを納得・受容させ、(3)実行に当たって助言し、指導する、というプロセスは一般に、十分確保されているとは言い難い。人事考課の公開など2割程度にとどまっている。
本調査では以上のほかに企業風土に関する設問を置き、企業風土と若年者の定着やキヤリア開発の関係を分析しようとしていた。しかし、本稿ではこの部分の集計作業が十分行えなかった。この点は、他日を期したい。
(高田一夫)