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稼ぐそのことに価値が持たれるようになる。「本末転倒の学生」たちといわれるようになった。その後生まれたのが「アルサロ」という言葉である。バイトの一般化を見事にいい表わしているといえよう。

同じ頃、「パート」も一般化されるようになってきた。主婦の「内職」から社会になくてはならない「パートタイム」の働き手として公認されるようになる。ここから、アルバイトもこの労働力なしでは成り立たない社会へと変化していった。まさに「日影の存在から日向の存在へ」である。

1980年頃のアルバイトの職種をみよう。高校生では「新聞配達」39%、「販売」が4%、「ウエイター・ウエイトレス」12%などで、夏休みのような長期休暇になると、「販売」28%、「製造作業」17%、「事務」15%(労働省婦人少年局調査)となっていた。

この労働力は全労働力の7.5%を占める。もっとも「新聞配達」だけでみると中学生14%、高校生28%となっており、中高生なしでは、新聞業が成り立たなくなった。

その後、サービス業が第一次産業より拡大して5割を越えるようになり、高校生・大学生なしでは、コンビニはもとより、スーパーなども成り立たなくなってきた。

1996年度の学生援護会の首都圏高校生・大学生のアルバイト実態調査によると「スーパー・レジ・CVS店員」のバイト体験者は12.9%と最も多くなっている。苦学生時代の「内職」、製造業時代の「アルバイト」から、大きな様変りを示している。だいいち、スーパーやコンビニエンスストアーという小売店形式は、90年代に入って盛んになった店舗である。コンビニエンスストアーには、今や銀行や公共費用の支払い窓口さえ設けられるようになり、略語も「CVS店員」として呼称されるようになった。

アルバイトの歴史は、産業社会の歴史でもあるが、同時に「学生・生徒の本来性」と「金儲け」の対立となって表われるようになってきた。高校生は「学習に全力を注ぐべきで、小遣い稼ぎのためにアルバイトをすべきではない、という主張になってこの対立が争点になった。

今は既存の対立点とは異なり、より鮮鋭になる。高校生たちは、自らの小遣いというより、ブランド品や旅行費用など遊びのためにアルバイトをするようになった。これはいったい許されることか、という疑問である。

こうして、アルバイトは学生生徒たちに何を得させて、何を失わさせるかに論点が移っていくようになる。

(2)アルバイトの功罪

昭和55年版アルバイト白書によれば、例えば職種別でみた「サービス業」の47.4%がアルバイト雇用者で占められている。図表1は、職種別アルバイト雇用の変化である。

こうしてみると、サービス業の約5割はもとより、運輸・通信分野の2割にしても、アルバイト学生・生徒なしでは、成立しないことが判る。これが54年当時のもので、あれから第三次産業、第四次産業といわれる分野の成長が著しい。今日での情報消費社会では、多くの職種でアルバイトの占める率が高くなっている。

 

 

 

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