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のなのか、何もわからない状態でのまさに手探りの作業であった。

作業は日々どんどん進んでいった。

実習を通して度々悩んだのは、どんなに予習をして、先生の説明を聞いて、出来るような気になっても、実際、遺体を前にすると、何をしたらいいのかわからなかった。なぜ、手が動かないのか不思議だったし、そんな自分がとても嫌だった。しかし、年が明けるころから、なぜ出来なかったのか、どうすればいいのかだんだん分かってきた。今まで自分は、説明と現実のギャップに対応できていなかった。遺体は必ずしも説明や教科書とおりではない。ここに筋肉がある、神経があると聞いても、すぐに見えるわけではない。そのためにやらなければならない過程や作業があるのだ。当り前で簡単なことのように思うが、人からああしろこうしろと言われてやることに慣れ、受け身になっていた私は、それに気づくのに時間がかかった。

自分が目的をしっかり持ち、現状を把握し、そしてそのために何をしなければならないかを考え、判断し、実行する。問題にぶつかれば、どうすれば解決できるかを考え、また実行する。このことに気がついたのは、実習を通して得た大きな進歩のひとつであった。これからの自分の生き方や考え方に大いにつながるものだと思う。

解剖学実習をやりとげたことは、私にとって誇りになることだと思う。四ヶ月の間に得たものは数限りがなかった。先生も言われていた通り、神様のつくりあげた人体というも

 

 

 

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