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が、ひとりの人間として、おじいさんとして目に飛び込んで来た。それからの実習では、自然とおじいさんに話かけながら作業を進めていた。

もう一つ深く心に残っているのは、肺と気管支の観察である。母親が亡くなる前に母の胸のレントゲン写真を見た。肺は真っ白に写っていた。医者からの説明は、肺に水がたまり、ガンが転移していて気管支も詰まっているというものであった。おじいさんの肺にも水がたまっていて、気管支には血がつまっていた。ものすごいショックだった。つまった血を全部取らないと気が済まなかった。

それまでの僕の考えはとてもおこがましいものであった。おじいさんが自分のからだを使って僕たちに教えてくれているんだと、素直に感じるようになった。そして、その量は想像できないほど多いことに気が付いた。決して、この実習が100%のものであったとは言えない。細かい構造では観察できなかったものもたくさんあった。しかし、解剖の知識以外に、大切なことを学ぶことができた。それは謙虚さであり、人間の尊さであった。

最後になったが、ご自分の体を僕たちのために献体して下さった方々に感謝し、ご冥福をお祈りします。

 

解剖学実習を終えて

 

星野 勝一

 

今回、解剖学実習を終えて、本当に貴重な

 

 

 

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