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に成り立つ薄っぺらなものだったと思います。しかし今までの約四ヶ月という短い期間で得た、解剖学実習での知識は、私にとって本当に重みのあるものになりました。

各先生方の手厚いご指導、そしてなによりもご献体と共に学んだ解剖学実習は、私の今までの人生の中でも、また、これからの人生の中でも最も貴重な体験として深く心に残ることだと思います。いつまでも感謝の気持ちを忘れずに、ご献体の意志を受けつぎ、将来のために役立てたいと思います。

 

解剖学実習を終えて

 

中川 綾子

 

初めて解剖実習があった日の夜は涙が止まりませんでした。この世界にたった一人しか存在しない人間を解剖するということへの抵抗感があまりに大きかったのです。自分がなぜ実習室にいたのかよく分からなくなりました。実習が始まる前、昔読んだ本に載っていた言葉をよく思い出していました。

『一粒の麦、地に落ちて死なずば唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし』過去の歴史の中に、他の人の為に自分の命を与えた人達―それも無償で―がいること

 

 

 

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