日本財団 図書館


解剖学実習を終えて

 

福山 悦子

 

「解剖学実習」まだ高校生だった頃の私は歯学部に、人体解剖なるものがある事も知らずに受験していました。そして、初めてこの話を聞いた時、今となっては大変失礼な話ですが、はっきり言ってぞっとしました。私にはそんな大それた事ができるのかという不安な気持ちでいっぱいになりました。しかし、初めてご遺体と対面した時、不思議なことに、今までの不安や緊張が消え、今日からいろいろ勉強させていただきます。よろしくお願いします」という気持ちになりました。

 

きっとご遺体を前にして、自分にはない立派さを感じとることができたのだと思います。自分の体をこれからの未来に少しでも役に立つようにという願いをこめながら、ご献体者は私たちに自分自身を託されたのです。その意志を無駄にするようなことは決してしてはいけない。大袈裟だと思われるかもしれませんが、私はそうはっきりと感じたのです。そう感じてからの解剖学実習は、神経を一本見つけるぐらいのほんのささいな事が発見でありまた、驚きでした。人間の体は、表面から見ただけでは本当に想像ができないほど複雑で、一つ一つの器官、筋、神経、脈管などにそれぞれの重要な役割りがあることがわかりました。解剖学実習を始める前の私の人体に対する知識は、ぶ厚い教科書の中の活字の上

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION