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認したりといったように、四ヵ月間、私の生活は解剖実習を中心にまわっていました。しかし、それでも追いつかず、いざ実習が始まると、分からないことばかりで、自分が準備してきた知識が、実習全体のほんの一部でしかないということをいやという程思いしらされてきました。私が想像していた以上に、実習で学びとっていかなければならないことが多かったのです。単に頭で理解するのではなく、実際に手に取り、感触、重さ、大きさを肌で感じ、視覚をフル回転させ、立体構造や位置関係、色調など、教室の授業で習う一つことに対してこのように、いろいろな角度から学んでいかなければならなかったのです。“百聞は一見に如かず”とよく言いますが、解剖実習はまさにそのとおりだったと思います。実際にこの目で見ると、理解しやすいというのはもちろんですが、私が強調したいのは、半年たった今でも、様々なことが映像として目にやきついているということです。言葉だけの単なる記憶よりも、実際に五感をフル回転させて得た知識の方が大切なのだと、半年たった今だけによく分かります。脈管神経の走行、器官の位置関係、などいろいろなことが容易に思い出すことができます。解剖実習を終えた今は、次の基礎医学として組織学や生理、生化を学んでいますが、やはり、心臓や肺、筋肉にしても、知識を集積していく土台は、このマクロ解剖学です。

また、人体解剖を通して得たことは、解剖学の知識だけではありません。改めて自分の進む道の厳しさを知りました。人体の構造の

 

 

 

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