精巧さに驚き、これから自分が挑んでいく人体という存在があまりにも大きく感じられました。いったい私に何ができるのだろうかと、圧倒されてしまいました。またそれ以上に、考えさせられたのは、私がこれから背負っていかなければならない、一人一人の人生についてです。解剖している時も、この、献体して下さった方々は、どんな人生を送ってきたのかと、ふと考えることもありました。今回の解剖ではそれぞれの人生を終えてきた方々でしたが、これから私が医師になって接する人々は、それぞれの人生を歩んでいる途中なのです。その責任の重さを改めて感じるとともに、これからの自分の使命に対する、挑戦的な気持ちが湧いてきました。
先程も述べたように、四ヵ月という時間は実に短いものでした。これだけ多くの課題をすべてこなし、完璧な実習ができたかといえば、自信を持ってうなずくことはできません。ですから、これからの勉強でそれらを補っていかなければなりません。解剖、実習をいかに生かしていくかは、これからの努力次第なのです。それに、これから医学を学んでいく上での、心構えや、学習のヒントは、この実習で十分に得たつもりです。このように有意義な時間をもつことができたのは、献体して下さった方々のおかげです。心から感謝すると同時に、この解剖実習で、学んだことを、これからの勉強に役立て、立派な医師になることを約束したいと思います。御遺体は、実習中、私にとって先生のような存在でした。無言ではありましたが、私たちに何か