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私と献体

廣田 猪之松

平成三年一月に妻が胃ガン手術のため帝京大付属市原病院に入院致しました。その時にかねてより献体したいと思っていましたので申込書を頂いてきました。私には肉親の同意と、死後であっても人前に身体全部をさらけ出す……そんなことのため安易に申し込むことができませんでした。

平成九年六月に肉親の同意を得ました。死後火葬されるのなら、医学のため、形を留めなくなるまで、足の爪先より頭の頂点まで、お役にたてるのなら、心の底からお役に立ちたいと、やっと六年五ケ月目に決心する事ができました。

今まで私の人生に特筆すべき事は何もありませんでした。そんな私が会員証を手にしたときほんとに嬉しうございました。仮入会から真の会員になるための義務がある筈、ややもすると沈みがちになる年代、こんな暗いものを打ち破るためにも、如何にして真の会員になるための義務を果たすか、日々考えることによって、希望がわいてきます。本部だより、会報しらぎく、帝京しらぎく私のこれからの人生の頼りでございます。

六浦の八景霊園へ参拝ができる楽しみもできました。最後に生前のご遺志が生かされた先輩会員の方々に謹んで哀悼の意を表し、私達を今後とも導いて下さるようお願い致すものであります。

私は中等教育を受ける時代に、虫垂炎続いて湿性胸膜炎にかかり、学校を中退せざるを得ませんでした。幸いに若かったので病に克つことができ、現役兵として海軍に入団することができました。然しながら現在まで健康と云うことについては、全くと云っていい程自信がありませんでした。やっとの思いで現在に至りましたが、自身で感心しております。今回入会をお許し頂きました上は、なによりも喜んで貰える材料として、使って頂かなくてはならないと思っております。現在難しい病気が沢山あるように聞き及んでおります。そんな病気を治すためにも、私が世話になってきた私の身体で間に合うのなら、そんな願いのためにも、いつまでも入会した時の気持ちを忘れず、しっかりと義務を守り、たとえ僅かでも体をこわさないよう気を配り、満足できる身体でお役に立てればと思っています。

(九・八・十八)

 

 

 

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