健康長寿の精神的良薬
大西正明
人間は子孫のために生まれ、子孫のために死ぬと言う説がある。否、人に限らずほかの動植物、すべて生ある者は、そうであるかも知れない。今更申すまでもなく、生者必滅の理わりは、今昔、洋の東西を問わず、誰もが避けて通れぬ大原則である。
特に、与えられた人生を全うして、この世を去る人は、子孫、後世に必ず何かを残している。人類は数千年の昔から堂々として、国家を作り、現在の文明、科学を築き上げてきたのであるが、これは正に先人の努力の賜ものである。
人々はそれぞれの分野に於いて、その人ならではのものを残し、残せられると思う。勿論、個人差があり、長命、短命、努力度、貢献度、人格、人柄等々後世に残せるものは、千差万別ではあるが、好き、嫌いにかかわらず、何等かのものを残して、次代、次世代の社会、民族、子孫に伝えて進歩、発展に役立っているのである。
色々と思いを巡らせながら、我々凡人は世のために残すものは何もないと自問自答の末、東寿会に入会して、お世話になろうと相成ったのである。
虎は死しても皮を残し、人は死して名を残すと言うが、到底名は残らぬ。そこで、虎には負けるまじ……?。私は死後なきがらを残し、(献体)医科学向上のため、解剖学の資に供し、社会に寄与、貢献しよう。これが凡骨の生ある時にできなかった、神への、また世の中へのせめてもの償い、ご恩返しと考え、献体を決意したのである。
私の説得により、家族、義弟も諒解、賛同してくれたのは勿論のこと。
因みに、以来、私は死後何時間かは必ず極楽浄土へむかえられるものと自覚、自認し、古稀を過ぎた現在、献体登録をしたことが健康長寿の精神的最高の良薬であると念じ、生涯現役を心がけている次第である。
近詠腰折れ
一、 シルバーパス使い初めしは都電にて 桜は見ごろ飛鳥の山へ
二、 戦友誘ふ花は桜の飛鳥山 初め訪い見ればこれやこのとて
三、 戦友集い遠き日偲び酌み語り 願いは老わず共に健やか