親子の面会及び交流は誰の権利か
離婚後の親と子が面会及び交流する権利とはいったい誰の権利というべきなのでしょうか。
この権利を諸外国の側で見てみると、ドイツ民法第1634条、スイス民法第156条、イギリス未成年者後見法第5条、米国統一婚姻離婚法(1973)第407条等では、「離婚後、親権者もしくは監護者として現実に未成年の子を監護・養育していない親がその子と会う権利」と定義しています。米国の場合は父母の他に40州が祖父母(1州は曾祖父母を含む)の会う権利についての規定を設けています。これらを見る限りでは親の権利と考えられますが、いずれも子の福祉優先の原則が前提にあるため、親の権利をどこまで制限するかが個々の裁判で争われることになります。
例えば米国ケンタッキー州控訴裁判所は、非監護親の服役それ自身は子との面会、交流を拒否する事由とはならず、それを阻止しようとする側に当該面会、交流が子の福祉を著しく害するとの立証責任があるとして、殺人、強盗、誘拐で終身刑を受けている非監護親が13歳の娘と面会、交流することによる著しい子の福祉の阻害は認められない旨を判示している等です。
わが国の場合を見ますと、学説では身分関係による自然権説、監護に関連する権利説、親権の一権能説、子の権利説など諸説あって統一された見解があるとはいえませんが、実務上は、子の福祉優先の原則が強く機能しているといえます。
面会及び交流権の明文化の作業は、『児童の権利に関する条約』の批准(平成6年5月16日)に伴う国内法整備の一環でもあることを考慮すれば、同条約第9条《親からの分離禁止》、第12条《子どもの意見表明権》、第18条《家庭環境における子どもの保護》の各権利の具体的実現に向けての各層の努力が目下の課題であると考えられます。
面会及び交流の拒否・制限の基準はあるのか
どのような場合が子の福祉を害することになるのかの問題であり、最終的には審判によって個々に決められるものですが、以下の点に留意しましょう。
(1) 非監護親が子に暴力を振るうおそれがある、子に対して監護親の悪口を言って監護親から引き離そうとするおそれがある、子を奪取するおそれがある場合は認めない。ただし、非監護親の人格の偏り、反社会的生活傾向がある場合については、子への実質的な影響の有無によって個別に判断。
(2) 子が非監護親との面会及び交流を望まない場合は、子の真意をよく確かめて慎重に。
(3) 非監護親が扶養能力を持つにもかかわらず子への扶養義務を果たさない場合は、子が望む場合を除き慎重に。
(4) 子の年齢が3、4歳以下の場合は監護親との安定した関係の継続が優先。
(5) 離婚の承諾、親権の帰属、経済的給付をめぐる駆引き、メンツ立ての手段に利用されていないことの確認。
親子の面会及び交流の具体的方法
具体的方法を決めるのは父母の協議によるのが最も望ましいことです。子の年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境を考慮して父母と子の負担が過重にならないような面会及び交流の回数等を決めましょう。面会には食事、買い物、訪問、旅行、学校行事への参加など多様な方法を選択できます。交流の方法にも相手にとっての特別な日に電話をしたり、手紙・写真・プレゼントを送るなどいろいろあるはずです。
協議ができないときは家庭裁判所の調停、審判で決めることができますが、強制執行に親しまないことからも、父母の協力があらためてとわれるところです。