家庭問題情報誌『ふぁみりお』第12号から抜粋?@
離婚後の親子の面会及び交流
本欄では、連続セミナー「子どもがいる夫婦のための離婚」からのレポートを、本誌第6号からテーマ別に毎号お届けしてきました。今回は、離婚後の親子の《面会及び交流》という耳新しい言葉を紹介することにいたします。従来は《面接交渉》と呼ばれていた離婚後の親子の交流を歴史的にふりかえりながら、今後の新しいあり方にもふれてみます。
セミナー「離婚後の親子の関係と交流」の報告は、次号に掲載いたします。
ある事例から
A夫さんとB子さんは2年前に協議離婚しました。当時2歳だったC子ちゃんを親権者として育ててきたB子さんが、研修で家を空けなければならなくなり、A夫さんにその間だけC子ちゃんを預かってもらいました。ところが、A夫さんはC子ちゃんが喘息になっているのを見てB子さんの育て方が悪いためだと言いだし、C子ちゃんを返してくれません。一時は家庭裁判所に申し立てることも考えたB子さんでしたが、新聞で当センターのセミナーの案内を読み、早速申し込んで前後3回の連続セミナーに参加しました。親は離婚後も子のための協力関係を続けることが求められているとの話を聞いたB子さんは、A夫さんを誘って当センターの相談室で自分たちが抱えている問題を話し合いました。
二人は当センターの《親子の交流援助》の予備カウンセリングを受けた後、監護者をA夫さんにした状態のまま月に一度B子さんがC子ちゃんと会うことに合意しました。日時、場所、C子ちゃんの受け渡しの方法等は、原則として、当センターが双方の希望を聞いた上で示す案に従うこととなり、正式にセンターの親子交流援助を受けることになりました。
親子交流の回を重ねるうちに、A夫さんとB子さんはC子ちゃんの様子から、以前のようにB子さんの側で育てるのがよいとの考えで一致するようになりました。そして、こもごもに、こんなことを言いましに。「C子は私たちに父も母も等しくかけがえのない存在であることを教えてくれました。奪い合うのではなく協力するための知恵を私たちにプレゼントしてくれました。C子は、それぞれの家で自分の居場所を求めています。私たちは、C子には家が二つあるのだと思うようになりました。」
親子の面会及び交流の由来
離婚後、離れて暮らす親子が何らかの方法で会っている割合はかなり高く、ある調査では40パーセントに達しているともいわれています。しかし、もともと不仲のために離婚した二人がそう簡単にこのことで協力できるとは考えにくいことです。親権者となって子を養育している側が「子のため」を理由にもう一方の親と会わせないと言えば、面会を強要することはできません。また実力による奪取をしかねない親に対しては協議の余地はありません。このために生じる紛争は、「子の監護に関する処分」事件として家庭裁判所の調停や審判にその解決が委ねられますが、大変に深刻かつ困難な問題です。
昭和39年に一つの家庭裁判所の審判が出されました。要約すれば、親権者もしくは監護者でない親は子どもと「面接ないし交渉する権利」を有しており、この権利は子の福祉を害さない限り、制限を受けたり奪われることはないとしたものです。これが《面接交渉権》という言葉の由来と言われています。
この権利を明文化した規定は現行の法律にはありません。内容的には、民法766条で協議離婚をするときに、父母が「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項」を協議して定める場合の「その他」の事項に当たります。
平成8年1月16日の民法改正要綱案では「その他」の事頂を「父又は母と子との面会及び交流、子の監護に要する費用の分担その他監護について必要な事項」と明定しています。前述の「面接ないし交渉」から「面会及び交流」という表現に落ち着く過程を経るなかで、雌伏30余年、遠からぬ日に「その他」の時代の終りを迎えることができるのでしょうか。