家庭問題情報誌『ふぁみりお』第10号から抜粋
別れて暮らす親子の生活基盤
離婚した親-特に母親-が、未成熟子(自分の収入で生活できない子のことで、未成年子とは範囲が異なることがあります)を引き取る場合、どのようにして暮らしをたてるか不安をもつことが多いでしょう。わが国では、女性、特に中年になってから勤めようとする女性の雇用問題は極めて厳しく、自分の力だけで子を養っていくことは困難です。生活保護など社会保障制度はありますが、それだけでは十分でなく、しかも扶養義務者がいる場合には、まずその義務が履行されることが期待されるのです。これを私的扶養優先の原則といいます。ここでは私的扶養にどの程度期待できるか、これを確保するにはどうしたらよいかなどを中心に考えてみましょう。
財産分与
夫婦が離婚する場合、一方は他方に財産分与の請求をすることができます。財産分与の意義のうち最も主要なものは、婚姻中に夫婦で協力して得た財産の精算ですが、その他に離婚後の生活保障や慰謝料の意味が含まれることがあります。夫が外で働いて収入を得て、妻が家事をしてきに場合、財産は夫名義にすることが多いでしょうが、その財産には潜在的に妻の持ち分があると考えられます。現在夫名義の財産がなくても夫の今日あるのは妻のおかげもあるのですから、将来の収入により支払ってもらってもよいわけです(例えば総額を決めておき分割払いにする)。
財産分与は多くの場合夫から妻になされることになります。離婚するにあたっては、以後の生活のことも考えてしっかりこの権利を行使しましょう。もし話し合いがつかなければ家庭裁判所に調停を申し立てます。財産分与の請求は離婚してからでもできますが、離婚後2年たつとできなくなるので注意してください。
養育費
親は未成熟子に対して扶養の義務を負っています。これは親の生活に余力がなくても自分と同等の生活を保障するという高度の義務であり、親権者か否か、父か母か、共同生活をしているか否かを問わないものです。未成熟子を引き取った親は、他方の親にも養育費の分担を請求できますが、離婚の際に額や支払い方法を取り決めておくのがベストです。話し合いがつかない場合家庭裁判所の調停・審判で決められます。
家庭裁判所で話し合いを進める場合、額については個々のケースで状況が異なるので一律な基準はありませんが、基本的には、子の必要生活費(父母のうち生活程度が高い方に暮らしていたと仮定して)を算出し、これを父母が基礎収入(総収入から税金、職業費などの他恒常的出費が避けられないローン返済額などを控除したもの)に応じて分担するという考え方によることが多いようです。
具体的な算定方法にはいろいろありますが、一例として、子が母に引き取られ、父が母より生活水準が高い場合の父の分担額を、厚生省の生活保護基準額をもとに算定する方式を示してみます(計算のために生活保護基準額を使用するということで、生活保護の額を支払えば足りるということではありません)。
子の必要生活費=父の基礎収入×子の生活保護基準額/父と子の生活保護基準額の合計
父の分担額=子の必要生活費×父の基礎収入/父の基礎収入+母の基礎収入
養育費は、子の日々の生活のためのものですから、月決めで支払ってもらうことが原則です。
子はどんどん成長しますし、親の生活状況も変わってくるので、一旦決めた養育費が実情に合わなくなることがあります。こういう場合には、話し合いで変更することができます。話し合いがつかないときは、やはり調停・審判で決めることになります。