日本財団 図書館


003-1.gif

 

ケース3

娘は若いお母さん

 

17歳の娘冬子が妊娠したことを心配して,母親の秋子さんが相談にみえました。

秋子さんは,冬子が小3の時夫と離婚し,冬子と弟の二人を引き取りましたが,3年後に再婚しました。再婚後,子どもたちが継父を嫌い,しきりに実父の所に戻りたがったので,頼りない人で不安はあったのですが,自分も妊娠中だったので帰したのだそうです。

冬子は,その後母の所へ来ようとはしませんでした。父の家では,家事一切から弟の世話までよくしていたようです。ところが,中学に進学した頃から生活態度が急変し,学校にも行かなくなり,髪を染め,年上の男の子と遊びまわるようになりました。秋子さんは,そんな冬子の様子を知って会いに行きましたが,冬子は反抗的で聞く耳を持ちませんでした。中学はなんとか卒業しましたが落ち着かず,そのうち妊娠してしまい,子どもは産むと言っていると聞いて秋子さんは途方にくれてしまったということでした。

秋子さんは,相談担当者の助言で,冬子と連絡をとるように努力しました。初めての妊娠で不安のある冬子は,少しずつ心を開いてきました。そして,出産退院後には,毎日手伝いに通った秋子さんに,次のようには心情を話してくれました。

「いままで,お母さんは自分たち姉弟を捨てた勝手な人だと思っていた。お父さんの所に戻った時,転校先の学校でいじめられて本当につらかった。でも,お父さんに言っても仕方ないという感じがして……だから学校に通う気にもなれず,家事をするのも嫌になってしまった。男の子と遊んで,その時だけ淋しさがまぎれた。この子の父は年男だけど,妊娠したと言ったら産むなと言われたので,わたし一人でも育てると言って喧嘩になった」と。

その後,秋子さんは,冬子と赤ちゃんを連れて相談室に来ました。冬子はこまやかに面倒をみており,赤ちゃんは順調に成育していました。冬子によれば,年男と話し合い,結婚の希望はかなわなかったけれど,認知させることはできたとのことでした。秋子さんは,まだまだ不安はありますがと言いながらも,冬子の母親ぶりにようやくほっとしている様子でした。

003-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION