コツーリズムの意味について考えてみよう。
第一に、これまで述べてきたようにエコツーリズムはマス・ツーリズムという現象を中心に経済効率を優先的に追求してきたこれまでの観光に欠けていた考え方を持っている。その考え方とは観光資源となる自然資源を持続可能にするということであり、その具体的方策は事前の計画策定と継続的な管理である。観光がある地域に存在する自然。文化資源の上に成立する産業である以上、そこで観光化をすすめる際の原則はそれらを将来世代に引き渡すことである。マス・ツーリズムがこれまで引き起こしてきたような、ある美しい海岸で観光開発が行われそこに大量の観光客が押し寄せ汚されてしまったからといってまた次の海岸を同様に消費していくことはできない注36。エコツーリズムはこの点においてマス・ツーリズムを補うことができる。保全すべき貴重な自然環境が存在する地域で観光開発を行う場合にはエコツーリズムの導入を考えればよい。反対に、都市のように大量の観光客の収容に耐えうる地域ではマス・ツーリズムを中心に据えて問題がない注37。
第二に、エコツーリズムの登場により観光客に提供できる選択肢の幅が広がっている。観光客数の増加とは繰り返し旅行する人々の増加でもある。最初は一般的なパッケージ・ツアーの行程にしたがって旅行をした人々も、旅行に慣れていくうちに画一的でない多様な観光体験を求めるようになると思われる。そして、マス・ツーリズムへの対応だけではすくい取ることのできない観光需要が発生する。このように観光客数が増加していくことは、単にマス・ツーリズムの拡大だけではなく観光需要の多様化をも招くであろう。ここでもエコツーリズムはマス・ツーリズムを補う役割を果たすことができる。自然環境に興味を持つ人々にエコツーリズムを新たな選択肢として提供できるからである。
以上の理由から、マス・ツーリズムにとつてエコツーリズムの存在が重要であることが導かれる。マス・ツーリズムを中心とした観光では拡大する観光需要への量的な対処は可能でも、それだけでは現代の観光に求められているものに対応しきれないのである。
次に、エコツーリズムにとってのマス.ツーリズムの意味について考えてみよう。
?章で述べたように、逆にエコツーリズムだけでは拡大を続ける観光需要に量的に対処しきれないという問題がある。その点、マス・ツーリズムへの対応を前提とした既存の観光形態では、最初から観光客の数を「こなす」ことを考慮している。それ故、観光需要への量的な対応という点ではマス・ツーリズムを基本とした観光形態に一日の長がある。
また、エコツーリズムに対しては、マス・ツーリズムによるものよりも深刻な弊害をもたらすかもしれないとの批判がされていることも指摘しなければならない。短期的にはマス・ツーリズムよりも観光地の