る現在、国家政策を立案していく上では、明らかにしておかなければならない研究課題であり、重要な示唆を与えうると考える。
なお、本研究で国際観光政策と呼び、対象としているのは、訪日外国人観光者に対する、いわゆるインバウンドの政策であり、アウトパウンドの政策は除外している。
また、対象とする時代は、始まりは開国時とし、終わりは大阪万国博覧会が終了し、翌年に出入国者数が逆転した1970年とする。ここで切るのは、日本国民の内外への観光が爆発的に増大してきた頃で、わが国の観光政策の重心が国際から国内へと転換していった時期であると思われるからである。
2. 研究の資料
本研究では、明治以降の国際観光政策に関わる行政及び民間団体の公的記録や観光関連雑誌等を資料として用いた。
既存の研究や観光事業の略史等も勿論収集したが、なるべく原資料に近いものを収集することに努めた。
3. 国際観光政策の展開の概略史と時代区分
(1)時代区分のための視点の設定
まず、国際観光政策の展開のマクロな流れと変化をみるために、国際観光政策の性格的特徴を把握する次の4つの視点を設定した。
まず、政策とその実施内容の面から、
1. 国際観光関連の行政組織及び中心団体の成立と変化
2. 国際観光関連の政策・計画・法制度の登場と変化
また、政策の立案と実施を要請するバックグラウンドという面から、
3. 訪日外国人(観光者)の人数や性質(国籍等)の変化
4. 日本の国際社会に対する外交政策や経済政策の変化
この視点毎に、概略を通史的に辿り、変化点を抽出し、それぞれの視点での時代の区分を行う。
(2) 国際観光関連の行政組織及び中心団体の成立と変化
行政組織及び中心団体の変遷からみると、次のように時代区分できる。
? ホテル、ガイド等の民間業者による個々の外客接遇胎動期(開国〜明治25年)
? 「貴賓会」(財界)による外客接遇萌芽期(明治26〜44年)
? 「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」(半官半民団体)中心による宣伝接遇期(明治45年〜昭和3年)