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応を重視し、非日本人市場に参入できないことがエスニックな経営行動を形成させている。

 

V. エスニックな国際経営行動の問題点

1. 変化する日本人市場への対応

近年、インターネットやFFP(Frequent Flyer Program)の普及により、FIT(Foreign Independent Tour)の旅行者が増え、旅行企業離れの現象が世界中の旅行企業を悩ませている。旅行企業の利用率が高い日本では、特に日本人旅行者が日本の旅行企業を利用しないという現象が起きている。エスニックな経営行動の問題点の1つは、この現象に対応できないことにある。そして、この現象を促進するのは日本人市場に4つの変化がみられるからである。

エスニックな経営行動の問題点を表面化する第1の変化は、顧客の低価格志向である*8。以前、旅行者は安全性、安心感、信頼感を重視することから価格に関係なく自民族の企業を利用する傾向があった。しかし、近年、旅行者は快適性にやや欠けても、より低価格のサービスを求めるようになった。購買時の選択基準が価格重視へと移行したのである。その意味で、民族的な行動特性に焦点を当てたサービスの必要性が減少しているともいえる。現在、旅行者は価格次第で非日本企業を利用したり、旅行企業を利用せずに各自で手配を行ったりする方向に選択肢を拡大している。顧客の低価格志向はディスカウンターを成長させ、日本の旅行業界における大手中心のピラミッド型構造に影響を与えたが、国際競争を生み出す可能性も引き起こしている。

第2の変化は、市場のグローバル化である。現地市場で当初苦戦を強いられた日本の製造企業も市場調査を行い、製品開発やマーケティングで改善と標準化を行った結果、現地市場に受け入れられるようになった。標準化が困難とされるサービスでも、販売促進と品質の標準化によりファースト.フードのようなサービス業は、商品市場同様、世界中で受け入れられるようになった。価格が適正であれば、人々は高度に標準化された世界的な商品を選び、世界は同じ商品やライフスタイルを欲する単一の市場になる(Levitt,1983)。旅行市場でも市場のグローバル化の兆候がみられる。例えば、従来、欧米は長期滞在型、日本は短期周遊型の旅行形態が主流であったが、日本でもフリータイムの多い滞在型を好む傾向に移行している。逆に、欧米の旅行日数は短縮している。顧客の変化だけでなく、ホテルや航空会社などのサービス企業もあらゆる国の人々に合うサービスの提供に努めている。地球規模的な商品が登場し、国際的な市場が拡大している。

第3の変化は、非日本企業に対する人々の懸念が和らいでいることである。一般に、消費者は失敗や悪い体験を排除しようとすることから購入時にリスクを負う。初めて購入する場合には、一層多くの不安や抵抗を知覚する(Popielarz,1967)。そして、このリスクはモノよりもサービスの購入において大きく、リスク軽減の手段として情報探索、ストア・ロイヤリテイ、口コミ、ブランド・ロイヤリ

 

 

 

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