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Bureau International Inc.(以下、JTBI)に再編した。2カ所で発足したJTBIもサンフランシスコ、ホノルルなどの支店が加わり、拡大していく。業容も日本人旅行者の増大に合わせ、インバウンド業務を本格化し、オン.オペレーションを行うようになる。現地の市場開拓も日系人市場だけでなく、非日本人市場にも取り組んでいる。ビジネス旅行の分野では、1980年代半ばよりアメリカで主流となっているBTM(Business Travel Management)*5にJTBIも取り組んでいる。だが、アメリカの大手旅行企業との体力的格差は大きい。日本の旅行企業は漸くBTMの概念を入手し、システムを開発、キャッチアップを図る状況にある。インセンティブツアーやコンベンションでは、従来、日本国内での取引関係から製造企業を中心とする日系企業の市場を獲得することができた。だが、これらの海外子会社では経営の現地化が進み、日系だからという理由だけで日本の旅行企業を優先的に利用することが少なくなっている。一方、レジャー旅行の分野では、パッケージツアーのホールセール部門を置き、アメリカ国内、東南アジア、オセアニア方面への商品を販売していた。しかし、駐在員市場では成果があるものの、非日本人の利用率が低く最終的に残ったのは東南アジア方面へのパッケージツアーのみとなった。そして1996年、このホールセール部門は売却された。アメリカに進出している日本の旅行企業としては最大の店舗数を誇るJTBIだが、アメリカの大手旅行企業が直営もしくは系列下に治めている店舗数には到底及ばない。そのため、日系企業が全米でカバーできる旅行市場の範囲は限られており、個人手配の旅行市場も吸収できていない。インバウンド業務では成功しているが、アウトバウンド業務では必ずしも成功していないのである。

このようにインバウンドとアウトバウンドの両業務を扱うニューヨーク本社では、双方の部門間に相違が見られる。従業員数を日本人および日系人と、非日本人の間で比較すると、インバウンドの部門では7:3であるのに対し、アウトバウンドの部門では3:7に逆転する。それぞれの部門の特色はどのようになっているのだろうか。

まず、インバウンドの部門ではフロントラインに日本人が多い。日本人でなくても日本語が話せるスタッフ、日系人や現地人であってもバイリンガルが配置される。一方、バックオフィスでは職務内容により配置が異なる。例えば、財務や会計など、現地の法的知識を必要とする職務には現地人を採用する。仕入れで現地のサプライヤーと交渉するパーチェイシングにも交渉相手が現地人であることから現地人を抜擢する。しかし、旅行者の多くは日本人である。日本人向けの旅行にするための素材の選択と造成は日本人が行う。つまり、日本人が選択した旅行素材を現地人が仕入れ、それを日本人がアレンジするのである。このように日本人と日系人の多い組織では電話の応対が日本語で為されるなど、日本的な経営スタイルが強く現れる。

一方、アウトバウンドの部門には2つの側

 

 

 

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