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ン・オペレーション、ガイドの掌握と選別は委託した。積極的にアウトバウンドに着手できる権利が与えられたにも拘わらず、現地法人として親会社の送金に頼らずに運営するためのマネジメント業務が増大し、現地の市場を開拓することができなかった。新しく展開できる可能性を持ちながらも、その機会を十分に利用することができなかったのである。

そして、現地法人化した2年後の1995年、カナダから撤退することになった。主な理由は、訪カナダ日本人旅行者数が当初の予想を下回り、運営効率が悪化したからである。カナダに自社の拠点がない現在、東急観光はカナダへの送客を日本事務所を持つ現地のツアーオペレーターを通じて行っている。

以上から、法人を対象とする旅行企業の海外進出の特徴として次のことがいえる。まず、進出の目的は、海外進出日系企業の旅行業務を担当するためである。国内で保有する法人需要に対する強味を海外においても発揮しようと、取引関係があった企業の海外進出に合わせた進出を図っている。日本企業の海外進出に伴い発生するであろうビジネス・チャンスを求めた追随的な海外進出といえる。そのため、進出地域は日系企業の多い地域であり、進出の目的と地域はともに日本企業の海外進出に対応した動きである。

 

ケース・スタディ3:日本交通公社

-Japan Travel Bureau International Inc.-

日本交通公社(以下、JTB)は、欧州、北米、アジア、オセアニア、ミクロネシアに62の拠点(現地法人24、支店31、営業所26、事務所5)を設立している。海外活動は当初、外客誘致を目的としたが、日本人海外旅行者の増加に伴い、インバウンド業務がアウトバウンド業務を上回るようになった。現在、アウトバウンドを扱う拠点は20カ所に過ぎない。

JTBの海外進出は、1913年、その前身であるジャパン・ツーリスト・ビューローがニューヨークのジャパン・ソサエティ内に案内所を設立したことに始まる。独自の海外拠点としては1928年、ニューヨークに出張所を設立した。だが、第2次世界大戦中、国際観光事業は中断され、1952年にニューヨーク、1953年にロサンゼルスに日本観光宣伝事務所を復活させた。そして、財団法人国際観光協会の設立に伴い、これらの事務所を委譲、JTBはアメリカでの販売活動を行うために1957年、ニューヨークとロサンゼルスに独自の事務所を開設した。この時代の主な業務は、訪日旅行を中心とするアウトバウンドである。親会社から受注するインバウンド業務もあったが、オン・オペレーションは行わなかった。

ところが、海外活動を強化するにあたり、事務所を現地法人化する必要が生じた。親会社が営利法人化することにより、海外拠点も同様に扱われるようになるからである。また、非営利法人では営業活動が制約される上、現地の税務当局がJTBの業務を非営利行為とは認めがたいとしたからである。当時、日系同業他社の多くは現地法人化していた。そこで1964年、アメリカの事務所を本店1カ所、他は支店とする現地法人Japan Travel

 

 

 

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