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グ調査を行った。事例研究は、少数の事例について深く多面的な分析が可能になる反面、筆者の恣意的判断が介入しやすく、発見事実の一般的妥当性と信頼性に対する疑問が生まれる。しかし、旅行企業の海外進出に関する調査研究がまだ発展段階にあることから、実態や因果関係の全体像、歴史的変遷を把握することのできる事例研究を行うことに意義があると考える。

 

?. ケース・スタディ1:近畿日本ツーリスト-Kintetsu International Express(Europe)B.V.-

近畿日本ツーリストは、欧州、北米、東南アジア、オセアニアに39の拠点(現地法11、支店21、駐在員事務所4、分室6、営業所等8)を設立している。欧州の8拠点を統括するのがアムステルダムに本社を置くKintetsu International Express(Europe)B.V.(以下、KIE ヨーロッパ)である。欧州の現地法人、支店、事務所はその「支店」として機能している。

ヨーロッパへの進出は1967年、アムステルダムに駐在員事務所を設立したことに始まる。一般旅行者を主な対象としたこの進出の目的は「旅客サービスの充実」にある。海外進出以前、現地での旅行業務は現地のツアーオペレーターに委託していた。しかし、旅行者が現地のツアーオペレーターのサービスに満足しないという問題が発生したことから海外進出に踏み切った。旅行者は日常的な生活習慣を継続しようとする。海外においても国内同様のサービスを要求する。だが、現地のツアーオペレーターには日本人の考え方や行動特性を理解することが難しく、トラブル発生時に旅行者に納得のいく説明や取りはからいを行うことができなかった。親会社は現地のツアーオペレーターを管理、監督しなければならない。だが、当時は連絡手段として電話、手紙、テレックスに頼らざるを得ず、日本国内と海外の拠点がリアルタイムで正確にやりとりを行うことが困難だった。そこで、親会社から社員を出向させて対応する手段、つまり、駐在員事務所を設立したのである。

高度経済成長期に入り旅行者がさらに増加すると、現地企業に委託してきた業務を自社のオペレーションで行うようになる。それまでに収集、蓄積した海外情報と海外経験から独自にツアーを催行(オン.オペレーション)できるようになったのである。オン・オペレーションを開始する理由は3つある。第1は、顧客管理である。かつて旅行企業の社員はセールスに廻り、契約を結んだ顧客を自分の「お客様」として、その旅程作りから添乗に至るまでの全業務を引き受けた。その伝統的な旅行企業の姿と役等から「自分のお客様を自分で管理するのは旅行会社としては当然」という意識があるからである。第2は、情報の流出を防ぐためである。顧客データを蓄積、分析することによって競争力となる自社独自の個性的な企画、サービスを創造するためである。第3は、コスト削減である。ツアーオペレーターを通じることによって発生

 

 

 

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