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旅の印象記

 

1997年10月20日の夜、東京に到着し、22日には私の活動についてのレクチャーを行い、25日にヴェトナムに帰国しまいた。

 

このレクチャーのほかに、私は海外の舞台芸術関係者を対象に行われたプログラムのうち、日本のコンテンポラリーダンスについてのセッションに参加し、また、セゾン文化財団が主催したトライアングル・アーツ・プログラムの振付家のミーティングにも出席しました。また、夜は東京国際舞台芸術フェスティバル'97の公演を見に行きました。

 

短い期間だったにもかかわらず、東京滞在中に聞いたもの、見たものに強い印象を受けました。特にコンテンポラリーダンスについてのセッションは、印象深いものがありました。そこで聞いた話と、若手のカンパニーの作品のヴィデオ上演、ダンス公演を見た印象を頭の中で結びつけることが出来ました。

 

日本の若い振付家達が日本の伝統的な美意識と考え方の成り立ちについて(自覚的であろうがなかろうが)思いをめぐらせていることに強い印象を受けました。それが東京という消費文化が発達し、個人のアンデンティティが失われかけている大都市で、こうしたフェスティバルを通じて、「私達はどこから来たのか、私達は何者なのか」という伝統と現代をテーマにした真剣な議論がなされていることに驚かずにはいられませんでした。

 

また、このフェスティバルが若い世代によって運営されていることに、驚き、感動しました。彼らは、自然体で、暖かい人たちでした。短い滞在期間でしたが、私はすぐにこれが人間的なプロジェクトであることを感じることが出来たのです。このようなプロジェクトが今後も増えていくことを願ってやみません。というのも、このようなプロジェクトを通じて、精神を活発にし、現実を再発見することが出来ると思うからです。

 

ハノイにて、1997年12月10日

エアソーラ

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