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この報告を受け、ラウンドテーブルによるフリーディスカッションを行ったが、参加者に制作関係者が多かったこともあって「観客の獲得」とそれをめぐる制作者の役割などについて活発に議論された。ここでは記録をとらないことで参加者の自由な発言を保証したので、ポイントになったと思われる発言の要点をランダムにあげておく。

・演劇があまり存在していない地域などでワークショップを行うと、演劇を必要と思っていない人々と付き合うことになる。そこでは、演劇とは何かを確実に言葉にしていかないといけない。例えばこのことは、「演劇の社会化」ということではないか。

・90年代に入って演劇は、消費と芸術性の狭間にある。

・若い人ほど大きなテーマで作品を作ろうという意欲があってよいと思うが、残念ながら風俗しか描けていないのではないか。

・突出した作品で観客を作るだけでなく、専門的アプローチが必要である。

・観客を数として獲得するのは一つの作品で可能だが、それはその作品の客、その集団の客であって、継続した演劇の観客とは必ずしも言い切れない。

・観客を組織するという制作の在り方ではなく、社会に演劇を開いてゆくための、より専門的な制作サイドのアプローチが必要である。そのためにはアドミニストレーターの人材育成が急務である。

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この場は、結論を出す場として設定されたわけではなく、参加者がここで得たものをそれぞれの現場に持ち帰り生かしていくことを目的として開かれたので報告はこれにとどめるが、30〜40代を中心に20代〜60代の参加者による世代を超えた議論が具体的に行われたこともあり参加者には概ね好評だった。今後こうした議論が継続されるべきであるとの感想が終了後多く聞かれたことを付記しておく。

(記:新里康昭)

 

 

 

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