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机二つと椅子が三つあれば芝居はできる、とおっしゃる人もいるかもしれません。そうした演技のし方も確かにあります。しかし、現代の技術の発達は素晴らしく、そうしたものが必要となってきた時に、それが使える設備があることは重要です。それから一つ注意を申し上げたいことがあります。
劇場の仕事の中には、とても軽蔑的な言い方になるかもしれませんが、「寄生虫的」な職業があるということです。フランスやドイツで見てきたことですが、劇場のアドミニストレーションの中に、そうした寄生虫的な役割の人が入り込み、機能の足かせになっている場合があります。スタッフを入れて充実させるのであれば、それは技術的なスタッフであるべきです。今、劇場の設備が重要だと言いましたが、それを動かす技術スタッフについては努力をすべきです。そうしないと夢を実現させようと思っていたのが、悪夢になってしまう可能性があります。逆に、アドミニストレーションの方には、いなくてもいい人が沢山いる場合がよくありますね。プレス担当者、PR担当者、それから第二助手、助手の助手の助手の第五助手といったスタッフです。先程、中心となるスタッフはなるべく少人数で緊密に、ということを言いましたが、アドミニストレーションを誰がやるかという点を、きびしくまとめていくべきでしょう。私達はそれをやっています。
私の、ローザンヌ・ウィディ劇場には常勤のスタッフが22人ないし23人います。そしてこの人数で、ローザンヌの年間100の公演、そしてその他に460の海外公演、あとで正確な数字を見てみますけれども、本当に多くの回数の上演を行っています。そして、そのために多くの臨時職員を雇っています。常勤のスタッフ22人ないし23人の中で、アドミニストレーションの人員は、最大で6人です。その6人だけでどうやって仕事をしているのかと思われるかもしれませんが、私の答えは、好きな本を読む時間もちゃんと残っていますよ、ということです。
先程からいろいろなことを言っていますが、簡単に二つにまとめます。自分の料理は自分の台所ですべきであって、料理の専門家でない人を台所に入れるな、ということです。指揮をするのはアーティストであるべきです。また同時に、台所で自分の足を踏まないように、設備はちゃんとしよう。そういうことです。

松井●出席者の顔ぶれを見ますと、劇場の運営を担当なさっている方々というよりは、劇団の方々が多いんじゃないかという気がいたします。ゴンザレスさんの劇場の話をもっと聞いてみたいのですが、劇団をやっている若い制作の方々から、プロデューサーとしてのゴンザレスさんにいろいろ聞いてみたいことがあると思いますので、質問の方に移りたいと思います。それともう一つ、ゴンザレスさんの劇場は、本当に少ない人数で運営されているんですが、それでこれだけの活動ができるというのは、やはりこちらから見るとマジックのような気がしてきます 個人的な感想ですが、その、マジックの秘訣を聞き出してみたいなと思います。

ゴンザレス●明日も劇場に来ますが、皆さんとお話しできるかどうかわかりませんので、どうぞ今の機会を利用なさってください。もし今質問が思い浮かばなくて、後であの時聞いておけばよかった、と思われた方のために、とてもいい事を思いつきました。後で私達の劇場のファックスの番号をお教えしておきますので、ファックスでとうぞ質問をお送りください。三原さんがいますので、日本語で質問して結構ですし、答えも日本語になって返ってきます。ファックスは現代で最高の発明だと思いますね。

 

 

 

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