AT-NET21 黒テント・PETA『喜劇・ロミオとジュリエット』
1997年10月31日/下北沢「劇」小劇場
スピーカー:山本清多、桐谷夏子、ソクシー・トパシオ、ロディ・ベラ
これが本当に出会いのラブ・ストーリーな訳です。
桐谷夏子●まず、私達のコラボレーションはどうやって始まったかということと、どうして『ロミオとジュリエット』にこのレパートリーが決まっていったかを話していただきたいと思います。
ソクシー・トパシオ●黒テントとPETAの交流は、1978年から始まりました。インドで演劇会議が開かれた時に、黒テントの代表とPETAの代表が出会ったのが始まりです。それからお互いの国を私達は訪問しあってたくさんのワークショップの経験をしてきました。83年には東京でアジア演劇会議が黒テントの進行で開催されました。そうしたたくさんのイベントの、あらゆるシーンにおいて私達は本当に一緒に芝居ができたらこんなに楽しいことはないだろうにと夢を語り合ってきました。PETAは『昨日・今日・今日』という二月革命を扱った演劇で日本公演をやりました。黒テントも度々フィリピン公演をしていますが、私達は共同で作品を作ったことはなかったんです。83年から本当に真剣に現実的に私達は一緒に共同作業をしたいと語り合い始めました。でもどんな芝居がいいの?冗談で『ロミオとジュリエット』がいいんじゃないかという話はもう10年以上前に出ておりました。ジュリエットをフィリピン人にして、ロミオを日本人にしようとか、その次にはロミオの方をフィリピン人にしてジュリエットを日本人にしようとか、そういうことを話し合ってきました。なぜかというと、これが本当に出会いのラブ・ストーリーな訳です。この愛と憎しみのラブ・ストーリーを国と国の状況に合わせて、できれば面白いんじゃないかと考えていました。これは本当にPETAと黒テントのラブ・ストーリーでもあり、フィリピンと日本という国境を越えた国際関係の中でのラブ・ストーリーでもある、と感じました。そして、二人の劇作家と話し合って、『ロミオとジュリエット』を喜劇にしよう、という話がまとまりました。
山元清多●やったことがないわけですから、どういう作品がいいのかというのは、とても見当がつかない。で、両方の国の人がよく知っている作品がいいんじゃないかと。結局僕達、アジアの現代演劇をやっている者達は何らかの形で西欧の近代演劇というものに影響を受けながら自分達の現代演劇を始めているわけですよね。全く何もないところから自分達の演劇、現代の演劇というものが出来てきていない。どうしてもヨーロッパやアメリカの演劇というものの影響を受けながら始めています。それは日本の近代演劇も同じだと思います。日本の伝統的な演劇芸術というのがあって、さらに、明治になってから西欧の近代演劇を輸入したという形で、日本の新劇をはじめとする近代演劇というものは始まっているわけですと。