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アーツマネジメントセミナーでは、欧州各国の作品制作の現状を劇場運営の視点から数字も交えて語っていただいた。劇場、劇団の制作者からアーツマネジメントを専攻する学生まで参加者も多様であった。講師のルネ・ゴンザレス氏は、作品を料理に、劇場をキッチンに例えてこう語った。「自分の料理は、自分のキッチンで。ただしキッチンに素人を入れてはいけません。」さて、日本でははたしてどうであろうか。

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ポストパフォーマンストークは、公演終了後に観客に向けて行われるレクチャートークである。上演プログラムのうちの9演目で、各1回ずつ開催することができた(『しあわせな日々』のみ2回)。

観客へのアウトリーチのひとつとして近年日本でも盛んになってきているが、いずれの会場でも8割以上の観客が参加する盛況ぶりであった。質疑応答も活発で、舞台と客席との親密な関係作りに腐心していただいたスピーカーのみなさまに感謝したい。

 

出会いの場は、微力ながらもいくつか用意できたと考えている。しかし、出会うだけでは何も変わらない。今回のプログラムが、どのように成果として実を結ぶのか注目し続けると同時に、新たな出会いの場を今後も継続的に提案していきたい。

 

Photo/首藤幹夫(a.c.d.e)佐藤振一(b)

 

「インターナショナル・ヴィジターズ・ウィーク」について

フェスティバルは、単にそこに参加する関係者のためだけのものではなく、海外の関係者にその国の舞台芸術をアピールし、関係者同士が交流する機会でもある。ここ何年か、海外との交流の方法が、海外公演、招聘公演といった出来上がった作品の移動にとどまらず、共同作業にまで広がって来ているが、そのため以前にも増して国内外の関係者同士が信頼関係を築く機会が必要になっている。

 

今回のプログラムは、「近い将来一緒に仕事をすること」を前提に、徹底的に実践的な情報を海外の関係者に与えることを目的とした。お互いの国の一般的、あるいは断片的な状況についての知識はあっても、実際に仕事をしてみると実務担当者同士がその国の「現場の常識」を知らないために、不必要な摩擦が起こる例も少なくなかったからである。今回は、また、参加者の数も制限し、率直な意見交換の雰囲気を確保した。海外からは、主に日本との具体的なプロジェクトを持っている人に声をかけ、16名の参加を得た。地域的には、アメリカ、オーストラリア、カナダを含む環太平洋地域をメインに、進行中のプロジェクトを持つヨーロッパからの参加者を加えた。また、日本側から国際交流の現場に携わる30代、40代の制作者に経験談をお話しいただいた。

 

内容は、日本の舞台芸術界の概要(助成のしくみなど)、国内の関係者の間で最近話題になっているカンパニーのヴィデオプレゼンテーション、これまで国際的な共同製作、あるいはツアーを経験した制作者の話、海外の参加者がそれぞれに持っている将来的なプロジェクトの紹介などである。

 

 

 

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