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象の単なる先進形態ではない。老齢化の進行は、とくに顕著な地域を考えると東山、東海、近畿、山陰、四国、このようなブロックである。同じ過疎地域の小規模集落でありながら、北海道、東北、九州ではなぜそれ程でないのか――なぜそれ程老齢化が進行しないかという意味でしょうけれども、そのあたりに、過疎地域特有の老人問題の正体が秘められているように思われるというとらえ方をしております。

労働力市場に距離的に近いことが最大の要因で、距離的に近いために、心理的に比較的抵抗が少なく離村でき、しかも残された親たちのほうも、自分の子供たちが自分たちから離れていったという意識がそれほど強いわけでもないというような調査報告が中にございました。

人口流出、すなわち過疎がまず中国山地に発生したわけですけれども、若者たち、とくに家の後継者まで都心に送りだした親たちの立場からみても、子供たちが出ていった諸都市には古くから親近感があって、そこが北海道、東北、九州の家族心理と違うところだということです。他方、子供たちのほうは、彼らの多くは戦後第1次ベビーブーム時代に生れた世代で、豊かな時代に育って親との乳離れが遅いその次の世代とはかなり性格が異なっておる。そのような相互の情況のなかで、各家庭ごとの世代交替が延期されている実態が、とくに西日本過疎地帯で顕著に進行している老齢化傾向の正体ではないだろうかというふうなことを言っております。

そのまとめは、その節の一番最後にありますけれども、やはり老人たちの後継者世代をそれぞれの地域内で受け入れうるキャパシティーを拡大してゆくことが、過疎地域老齢化問題をめぐる基本対策になるはずであるということを言っております。

次の課題として集落移転について。ここでは、いろいろ調査事例を見ながら触れております。集落移転に伴いましても困難な問題が数多くつきまとっておるということで、第1の問題は、山村の場合、移転先用地としての適地確保が実際に非常に困難であるということ。したがって、最も望ましい方法は、地域最末端部の開発ないし再開発事業との関連のなかで用地確保が行われることである。

第2の問題は、自治体財政に余裕がない。これは、補助や過疎債の活用を図って財源措置を考えるということを言っております。

第3は、共有林に対する権利の問題。これは、集落移転の際の大きな問題の一つです。例えば奈良県十津川村の場合でございますが、十津川村では集落移転をやったわけでございますけれども、農道が近くまで入りました。しかし、自分のところまでは地形の関係で無理だということで、まとまって農道沿いに移転をしたという例でございますけれども、共有林に対しては財産権を保有しておりますので、これが解決されないと集落移転の障害になりかねなかったわけでございます。

 

 

 

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