整備等の物的な面に重点が置かれ、生産のみならず社会生活あるいは文化にも比重をかけた、より広い総合的な生活単位としての集落の改善の検討が足りなかったように思われるという反省を踏まえまして、交通通信が発達してかなり変わってきました集落の環境を検討しながら、住民の生活構造、あるいは意識構造に即応した新しい集落再編成を検討、調査してみようという考え方でこの調査がなされております。最も重要なことは、人間生活にとって望ましい環境とは何かという問いについて再検討を進めるということで、経済性に偏向しないで多様な価値観の尺度で生活環境を築いていくということに計画の理念を求めております。
集落再編成の課題としましては、経済面で重要な点を2点、この報告書では触れておりまして、一つは、今後は農業軽視というものを改めて、積極的な保護政策を行うこと。これについては、いろいろ議論があろうかと思いますが、この報告書ではそういう指摘をしておりまして、もう1点は産業の地方分散を進めることということで述べております。そういう面で見直しながら、生活基盤の環境を整備して基礎的な要求をまず満たさなければならないとか、あるいは再編成集落の主体性を確立するための組織づくりをしなきゃいかんとか、いろいろ課題を持ちながら調査検討を進めました。
再編成の方法には2つあるということが、第1章で前提として触れておりまして、一つは集落移転であると、それからもう一つは機能連関であると。これは、集落を移転するということが必ずしもふさわしくない地域もあるわけでしょうから、集落間の生活機能を有機的に結びつけることによって人口減少あるいは老齢化等々による集落の崩壊に直面している集落の機能を回復するという方法であると述べております。この2つの方法があるということを踏まえながら、次の3地区の実地調査に入りました。一つは岩手県岩泉町。これは1,000平方キロの広さの町で全国で一番大きい町でございます。それから愛媛県の柳谷村。松山市のずっと南の四国山地にございますけれども。それから鹿児島の瀬戸内町。これは奄美大島の南端のところへ位置しております。奄美本島と3つの島に分かれまして、後に出てきますが、加計呂麻島というようなところを重点的に調査に入りました。というふうなことで、この年度の調査に入っております。
最後の章の第6章で集落再編成の具体化の方策というまとめ、提言の部分がございます。集落再編成の目標としましては、地域における定着性を高めてかつ地域内部における結合力を高めるように地域の構造を変化していくことであるという目標を掲げまして、図にも示してありますが、生活環境のハイアラーキー構造が大都市から過疎集落に至るまで構造化されておりまして、このハイアラーキーに組み込まれていない過疎集落は、現在、社会的な政策の対象として扱われるにすぎない。そういう観点から考えていきますと、過疎集落を統合し、集落再編成を行っていくことは、政策面からみると経済政策の対象となりう