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過疎化対策に求められるのは、豊かな自然環境を生かした外界との交流をはかることであろう。

過疎化への対応として、ゴミやし尿処理などの公共施設については、いわゆる行政の広域化のなかで対応処理するのが、これからの方策となろう。東和町の場合、大島4ケ町の一つとして対応することが今後ますます必要となろう。

これが広域化によるハード面での対応とすれば、その分、ソフトの部分は、集落の内に向けて、住民へのきめこまかな対応が求められる。しかも住民の高齢化が進むなかでは、行政の果す役割はますます大きなものとなっている。

このように見てくると、こんにちの集落がかかえる問題が、過疎化対策にあることは当然としても、活性化で期待するのはもはや住民人口をもとに戻すことではなくて交流人口の増加であり、さらにいえば人口問題への訣別である。それにかわって重要な意味をもって来たのが高齢化対策である。高齢化は過疎化の結果であり、その申し子であったが、こんにち日本社会は平均寿命の延長によって、過疎地であるか否かを問わず高齢化対策が大きな課題となっている。つまり高齢化対策は過疎化集落における特殊問題(過疎地間では共通問題であるが)から21世紀に向けての日本社会全体の問題になって来ているということだ。

それだけに、過疎化のなかで日本一高齢化の町となった東和町での高齢化の実態や取り組みが注目されるのである。

このたびの調査で町長と懇談する機会があり、過疎をめぐる諸問題を包括的にうかがったが、その一つに「ハビテーション(Habitation)構想」なるものがあった。「周防大島高齢者居住圏構想」と呼ばれているが、大島4ケ町共通の取り組みとして高齢者の生き甲斐づくりの先端的な方策を打ち出そうとしているとのことだった。その表現からも「ゆたかな自然環境のなかに人間にふさわしい居住地をつくる」というものであろう。それの具体化はこれからであるが、全国的なモデルとなるようなものをつくり出してほしいと思う。

このハビテーション構想から連想されるのが、日本一高齢化率の高い島、沖家室の集落である。以前ふれたように佐野真一は最近この島の住民の生き方を『大往生の島』で論じているが、そのなかで次のように述べているのに興味をひかれる。

しかし私が沖家室に興味をもったのは、過疎化と高齢化を示すこうした異常な数値以上に、この島が、理想的な“大往生”の要件をほぼ完璧に備えているように感じたからである。この島は私の目には、老人同志お互いに助けあいながら老後を生き生きとすごし、従容として死におもむいているようにみえた。(31頁)

私が高齢化率日本一の東和町のなかでも群を抜いてお年の多い沖家宝を取材先に

 

 

 

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