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に出るのをとどまったり、Uターンするケースもあるという。都会で得られる収入や生活の利便性と、地区に残ったときの状況とを、天秤にかけた上での選択であろうが、伝統芸能の維持存続が過疎の歯止めにつながるケースとして着目しておきたい。

 

(5)村がとってきた集落施策

これまで、村が取り組んできた集落施策について整理しておく。

村には54の集落があるが、集落の上位概念として「大字」という単位がある。先に見た「戸河内地区」も大字の一つであるが、状況に応じていくつかの大字をひとまとめにして用いるケースもある。村内を「戸河内」「阿須那」「木須田」「宇都井」「今井」「雪田」「上口羽」「下口羽」「上田」の9大字に区分する場合や、「戸河内」「阿須那」「宇都井」「雪田」「上口羽」「下口羽」「上田」の7大字区分、「上口羽」「下口羽」をまとめて「口羽」としてしまう6大字区分などがある。

村としては、個別の集落よりもこの大字単位で施策展開を行う方が一般的であり、集会施設なども各大字単位で整備したり、事業も大字単位でバランスを考えて実施することも多いという。ゆえにこれまでは、定住住宅を建設するときも、人口が減っている地区に建設することが多かったという。

しかし、大字の中でも、「下口羽」「阿須那」は人家が連担しており、基幹的集落がある大字でもある。先に見たように、「下口羽」「阿須那」は、それぞれ行政や交流の中心として、あるいは教育・文化の中心として整備を進めていく意向を持っている。

 

3. 集落整備の方向と施策

(1)地域政策における集落の位置づけと集落整備の方向性

村では、今後の集落整備の方向について次のように考えている。

村としては、集落というよりも大字を行政の単位として認識しており、施策も大字単位で行っていくことを意識している。大字は、人づくりやコミュニティ育成には有効な単位と考えている。

しかし、大字は、行政の連絡や集会、祭りなどの生活機能の単位としては、まだ十分機能しているが、戸河内地区のケースでも見たように、買い物や通院などの村民の実質的な生活圏は、三次などの県外に依存している場合もあり、村民の生活行動半径は村域を大きく超えているのが実状である。

今後も、大字の中でも人家が連担している「下口羽」と「阿須那」は、村内の拠点として位置づけ、それぞれに行政や教育などの拠点としての役割を持たせる意向

 

 

 

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