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この他、集落に関する施策として「集落環境整備事業」がある。これは平成6年から施行されており、集落内の杉檜の立木を伐採し花木の植栽等を行えば、伐採ならびに植栽に要した費用の補助が受けられるものである。手入れがされていない針葉樹の林地が、人家間近に多くなると、集落の居住環境に良くないという観点から設けられた施策で、有効に利用されている。

 

3. 集落整備の方向と施策

(1)地域政策における集落の位置づけ

村では、集落整備の方向について次のように考えている。

村は、村民が主体的・創造的に取り組む環境保全や景観・うるおいづくりの活動を支援するほか、大字単位で特徴ある環境づくりを行っていくことを考えている。また、3つの生活圏を生かし、国道168号沿いでは核集落を、支流沿いではサブの核集落に対し、生活関連施設や定住住宅、高齢者向け住宅を整備していくという。

十津川村総合計画によれば、「(旧来の集落では)旧くからの人のつながりの大切さ以上に、集落を維持していけない現実の方が強くなってきている」とし、「中心的な集落数カ所を選びより一層便利にしていくとともに、その集落に住宅の適地を求め、若者の定住や周辺集落住人の受け入れ場所としていくことが大切」と記されており、既存集落から核集落へ移転希望があれば、受け入れを想定していることが伺える。これは同じ移住するのであれば、村外に移住されるよりも、村内拠点の利便性を高め、そこに移ってもらうことで転出をなくしていこうという考え方である。これからは、村内に「希望すれば住み続けられる条件」をどう作っていくかがポイントになっている。

3つの核集落は、住宅の整備のほかに、それぞれに役割分担を持たせるよう方向を打ち出している。北部の上野地は、観光の拠点としての役割を持たせ、運動施設や「芸術家村」の設置を検討する。中央の小原は、村の中心として各種公共機能の立地を重点的に集中していくとともに、特に若者向けの宅地供給を検討する。南部の平谷は車で10〜15分で到達できる人口が最も多いため、商業施設や医療施設が立地しやすく、生活関連施設の立地と住宅の供給を図るとしている。

しかし、住民へのヒアリング結果からも、必ずしも村内集落間の移住を肯定する声ばかりではない。現在の住まいに残りたいとする人たちも少なからずおり、両者が併存できる柔軟な対応が求められている。

 

 

 

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